[シンガポール 18日 ロイター] - シンガポールのヘン・スイキャット財務相は18日、新型コロナウイルスによる肺炎の封じ込めと、経済への影響に対応する約45億ドル規模の支援策を発表した。昨年が10年ぶりの低成長だった経済情勢を鑑み、予定していた物品サービス税引き上げを2021年には実施しないと表明した。

シンガポール政府は17日、新型肺炎の流行による感染拡大の悪影響を見込み、2020年の経済成長率見通しを従来の0.5─2.5%からマイナス0.5─プラス1.5%に引き下げた。

ヘン財務相は18日の予算演説で「世界経済が立ち直り始めたタイミングで、わが国は新型ウイルスの打撃を受けた」と述べ、新型肺炎の流行は確実にシンガポール経済に影響を及ぼすとの見通しを示した。

支援策は、医療関連支出の拡大を柱とする8億シンガポールドル(5億7500万ドル)の感染防止対策、企業や雇用への影響に対応する56億シンガポールドル(40億ドル)の経済対策などで構成。経済対策には、企業の賃金支給への支援や法人所得税の還付、観光・航空業界向けの支援策を盛り込んだ。

2020年度予算では、財政赤字額が109億シンガポールドル、対国内総生産(GDP)比率では2.1%となり、公式統計によると少なくとも2005年以来の高水準となっている。2019年度の財政赤字額は17億シンガポールドル、対GDP比で0.3%になると見込まれている。

シンガポールではこれまでに77人の感染が確認されており、発生地の中国を除くアジアで感染者が特に多い国の一つとなっている。

米アップル<AAPL.O>は17日、新型コロナウイルスの感染拡大が中国での同社製品の生産と需要の両方に影響を与えているとし、1─3月期の売上高が会社予想に届かない見通しだと発表した。

メイバンクのエコノミストは「新型コロナウイルスは、おそらく重症急性呼吸器症候群(SARS)よりも大きな影響を及ぼす。当時、シンガポールの輸出・観光産業にとって、中国は今ほど重要な存在ではなかった」と指摘。「国際サプライチェーンに悪影響が出ており、シンガポールの製造業も影響を実感するだろう」と述べた。

シンガポール政府は、同国をハイテク産業のグローバル・ハブとするため、今後3年間で83億シンガポールの予算を計上する方針も示した。

また、海面上昇から沿岸部を守るための50億シンガポールドルの基金、2040年までにガソリン・ディーゼル車を段階的に廃止する計画も盛り込んだ。

さらに、2025年までに予定される物品サービス税引き上げによる家計への影響を緩和するため60億シンガポールドルも計上している。

*内容を追加しました。