[北京/ジュネーブ 11日 ロイター] - 中国・湖北省の保健当局は11日、新型コロナウイルスによる肺炎で10日に103人が死亡したと発表した。これで同省内の死者数は974人、中国国内では1000人を超えた。

また、10日には湖北省で確認された新たな感染は2097人で、同省内での感染者数は3万1728人に達した。

なお計1万6687人の感染が疑われているという。

世界保健機関(WHO)は10日、新型ウイルスについて、中国に渡航歴のない患者からの感染がより広範な流行につながるきっかけになる可能性があると懸念を表明し、感染の拡大が制御不能な状況に陥らないよう取り組む必要があると訴えた。

また、横浜港に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員約3700人へのウイルス検査で、新たに65人の感染が確認された。これによって、同クルーズ船の感染者は計135人に達した。

WHOのテドロス事務局長は、中国に渡航歴のない患者からの感染について「懸念される症例」が出ているとし、「大火を引き起こす火花になり得る」と懸念。同時に「今は火花に過ぎない。われわれの目標は引き続き封じ込めだ」としつつも、「制御不能な状態となる前に、人類は新型ウイルスと闘う必要がある」と強調した。

一方、復旦大学の上海医学院のWu Fan副院長は、ウイルスの感染拡大が間もなく転換点に至る可能性があると指摘した。

WHOによると、新型ウイルスの調査に向け派遣した専門家チームの先遣隊が中国に到着した。

新型ウイルスの検査や治療法の開発が急がれる中、現時点で168の世界の研究施設が新型ウイルスを診断する技術を持っているとWHOは明らかにした。

また、英航空会社ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は中国本土への航空便の運航を3月末まで停止すると発表した。

中国国営テレビの中国中央電視台(CCTV)によると、中国の習近平国家主席はこの日、新型コロナウイルスによる肺炎患者の治療が行われている北京の病院などを視察した。新型ウイルスの流行が始まってから、習国家主席が公に姿を見せるのは今回が初めて。習氏は新型ウイルス感染拡大による経済への影響を踏まえ、政府が大規模な人員削減を食い止めると表明した。

中国人民銀行(中央銀行)金融政策委員会の馬駿委員は、コロナウイルスの感染拡大が急速に進む困難な時期を企業が乗り越えるのを支援するため、主要預金金利の引き下げを検討すべきとの認識を示した。さらに、商業銀行は新型コロナウイルスによる副次的な影響を受けた特定業種の企業の債務負担を軽減し、貸出金利を引き下げることにより支援すべきと語った。

関係筋によると、300を超える中国企業が新型コロナウイルスの影響を和らげるため、少なくとも574億元(82億ドル)の銀行融資を申請していることが明らかになった。融資を求めているのは新型ウイルス対策に関与している企業やウイルス感染拡大によって大きな打撃を被っている企業で、ネット出前サービスの美団点評<3690.HK>やスマートフォンメーカーの小米科技(シャオミ)<1810.HK>、配車サービスの滴滴出行、 顔認証技術のメグビー・テクノロジーズ、セキュリティーソフト最大手の奇虎360科技が含まれるという。

電子商取引大手アリババ<BABA.N>は、傘下の金融サービス企業アント・フィナンシャルのMYバンクが、中国国内企業に計200億元(28億6000万ドル)の融資を提供する方針を発表。新型ウイルスの震源とされる湖北省の企業には優遇金利を適用するとした。

関係筋によると、米アップル<AAPL.O>の供給業者である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業<2317.TW>は、中国政府から中国南部の深セン市の主要工場の操業再開許可を取得した。

こうした中、国際通貨基金(IMF)で対日審査を担当するポール・カシン氏は、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化し、広範囲に及んだ場合、日本経済は観光や小売り、輸出などを通じて打撃を受ける可能性があるとの見方を示した。

カナダのモルノー財務相も、新型ウイルスの感染拡大がカナダ経済に打撃を与える見通しとし、とりわけ同国の主要輸出品目である原油や観光業、中国にエクスポージャーのある企業の供給網などに影響が及ぶと予想した。