【巨匠の流儀】ストリーミング時代の「映画作り」に必要なこと

2020/2/9
マーティン・スコセッシ監督が、自身の集大成とも言うべき傑作『アイリッシュマン』、新興勢力ネットフリックスとの協働、映画における「女性」の描き方、迫りくる「死」という運命など、広範なテーマについて語り尽くすロングインタビュー。今回は、その後編をお届けする。

過去作の「重圧」をはねのけて

『アイリッシュマン』の製作には10年以上かかった。
ハーヴェイ・カイテル、ジョー・ペシ、アル・パチーノ(スコセッシ作品への出演は初めて)……。キャストが増えていくにつれて、スコセッシはこの映画をコケさせてはいけないというプレッシャーを感じるようになっていった。
そうした重圧は、製作スタッフの間にも広がっていた。
脚本を担当したスティーブン・ザイリアンは、スコセッシのこれまでの映画のコピーにならないように努めたという。
「彼の作品を頭の中から完全に消し去って、過去作のシーンを連想させない脚本を書くのは、とても難しかった。(スコセッシに)それは『グッドフェローズ』でやったことだ、とか、それは『カジノ』でやったことだ、と言われないようにね」
一方で、プレッシャーは数々の斬新な試みをもたらした。マフィアたちが登場するシーンで、それぞれの“死にざま”が字幕で説明されるという印象的な演出も、その一例だろう。
(Philip Montgomery/The New York Times)

アル・パチーノが語るスコセッシ