"悲観論"に陥るな。「データ」を直視して事実を捉えよ

2020/2/15
NewsPicksアカデミアでは、各分野の最先端を走る“実践者“たちを講師に迎え、MOOC(オンライン講義)、イベント、ゼミ、書籍、記事などを通じて、最先端の実学を提供しています。

今回は2020年1月17日に開催された「ビジネスパーソンのための『21世紀の啓蒙』入門」の模様をまとめたイベント動画を配信。

ここでは、動画の見どころを一部ご紹介します。

悲観論は"事実"を捉えているのか

山形 私は今、世界の「日本化インデックス」という指標を、ある機関の方と作ろうとしています。
 世界がじわじわと”日本化”しているのではないかーー。そう思ったのがきっかけです。
 日本は高齢化が進み、世界で唯一デフレになり、経済発展もしない。20年前は、世界から「もうわけがわからない”動物園”みたいな国だね」と珍しがられていました。
 しかし、最近は先進国でも高齢化が進み、アメリカやヨーロッパはおろか、中国まで経済成長が鈍化。少子高齢化になり、インフレ率も下がって、金利も上がりません。
 諸外国も、だんだん「日本化」しているように見えます。
 また最近はこんな”悲観論”も聞こえてきます。
 文明の進歩は止まった。もうコンピューターも発明されたし、飛行機も発明された。ひょっとしたら、バイオテクノロジーの進歩はあるかもしれないけど、これ以上何も出てこないのではないかーー。
 実は、1930年代にも全く同じ悲観論ありました。
 もう人口の成長が止まってしまった。文明も科学もフロンティアはもう見つけられない。いわゆる「長期停滞論」が叫ばれました。
 だから、これからは低成長を前提とした”新しい経済学”を作らなければならないという意見がありました。
 しかし、その後第二次世界大戦を挟み、急に成長が始まった。そうなると、長期停滞論を唱えていた人は「あいつらは何を言ってたんだ」と批判されるようになります。
 いいことが起こると、悪いこと忘れてしまい、その話はなかったことになりがちです。ひょっとしたら”世界の日本化”も、新しい何かが出てきて、改まる可能性は十分にあると思っています。
 1930年代のように、21世紀の変わり目の日本や世界も、後世の人々に「昔はずいぶん悲観的だったよね」と言われるかもしれません。

「テレビ離れ」は全然起こっていない

柳瀬 経済の話にもつながるんですけど、21世紀の啓蒙では「基本はデータを見ようよ」という考えが根底にあります。
 私は東京工業大学でメディア論を教えていて、その際に「どうやってメディアを消費しているのか」延べ1000人ぐらいの学生にアンケートをとってきました。
 皆さん、よく「テレビ離れ」って聞きますよね。学生のテレビ離れって2005、6年から言われているんです。
 しかし、実際に調べると、週に半分以上テレビを視聴する学生は、だいたい76%。全然離れていません。
 ちなみに新聞や雑誌は本当に離れていて、新聞を読んでる人は13%くらい。雑誌を読んでいる人は、すべて合わせて18%くらいです。
 ところが、テレビ局の人にこの話しをしても「そうなんですか?」という反応をされる。
 もちろん、私が行なった調査は、統計的に十分なサンプル数ではないかもしれません。しかし、1000人くらいに訊いてみるだけで、「世間で言われていることは本当か?」と疑問が持てます。
 この21世紀の啓蒙は、様々な統計データを用いて裏付けをしています。だから、ピンカーの本は分厚くなる。
 ベストセラーの「FACTFULNESS」も、「データで見たら全然違うよね」というのがテーマです。人間が作る物語は、データを裏切る悪い癖が出ることもあります。
 「経済がどうなるのか?」と考える前に、普段のスタンスとして、統計データをいろんなジャンルで見る癖を持つのが大事。現代は本当に便利で、インターネットでデータが取り放題です。
 複数のデータを取れば、こっちのデータとこっちのデータがちょっと違って、矛盾している。一体、なぜだろうと考えられます。
 また「21世紀の啓蒙」のような本も、インターネットの時代だからこそ、昔に比べるとスピーディーに作れる。
 この30年は、情報がものすごく容易に手に入るようになりました。この状態をいかに活用するかが、ものすごく重要です。
アカデミア会員の皆様は、こちらで動画の全編をご覧いただけます。

来週2月21日(金)はイベント動画 「売れる『世界観』のつくり方 〜顧客を巻き込むD2Cのブランド戦略〜」を配信する予定です。

動画を通じて、アカデミアの「知」に触れていただければ幸いです。来週以降の配信もお楽しみに。