[北京/上海 3日 ロイター] - 中国は3日、新型コロナウイルスの感染拡大を巡り世界保健機関(WHO)が中国に派遣する専門家チームに米国が参加することを承認した。WHO報道官によると、多国籍の専門家チームは週内にも中国に派遣される。

ホワイトハウスのジャッド・ディア報道官は「WHOが派遣する専門家チームに米国が参加することを中国が承認した」と述べた。

ただこれに先立ち、中国株式市場が春節(旧正月)の連休明け3日の取引で新型コロナウイルスの感染拡大を巡る懸念で急落する中、中国は米国が自国民の退避のほか、渡航自粛を勧告したことなどでパニックが助長されているとして米国の対応を非難。

中国外務省の華春瑩報道官は記者団に対し、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染拡大防止に向け旅行や貿易を制限する必要はないとしているにもかかわらず、米国は「不安を煽り、不安を広げることしかしていない」と批判。「強力な感染予防力と施設がある米国のような先進国が率先して、WHOの勧告に反した過剰な制限を導入している」述べ、各国は冷静、かつ科学的な事実に基づいて判断を行う必要があるとの考えを示した。

米国は過去14日間に中国を訪問した外国人の入国を一時的に停止するなどの措置を取っているが、米疾病対策センター(CDC)はこうした措置を弁護。CDCの予防接種・呼吸器疾患センターのナンシー・メッソニエ所長は「過去に例を見ない脅威を前に、われわれは積極的な措置を決定した。現時点で行動を起こすことが、封じ込めに向け最大の効果を発揮する。ここではこうした理論に基づき動いている」と述べた。

WHOは1月30日、新型ウイルスの感染拡大で「世界的な緊急事態」を宣言。同時に、中国に対する「不信任」ではないと強調し、中国との取引や渡航の制限は勧告しないとした。

WHOのテドロス事務局長はこの日の執行理事会で、感染拡大防止に向けた「旅行や貿易を不必要に制限する」必要はないと言明。各国に「事実に基づき、整合的な決定」をするよう呼び掛けた。

執行理事会に出席した中国代表は、各国が講じている入国制限措置や航空各社による中国便の運休などについて「WHOの提言に反している」と批判。国際社会は客観的かつ公平に対応する必要があるとし、故意にパニックを招くようなことは回避するよう訴えた。中国代表は北京からの便が欠航となったため出席できず、他の代表が代わりに出席した。

中国国営新華社によると、習近平国家主席は、感染拡大の防止は国民の安全と健康のほか、経済と社会全体の安定性に直接関わっていると述べ、新型ウイルスの封じ込めは中国が現在直面する最も重要な課題との認識を示した。

<各国の対応>

中国国営メディアによると、新型ウイルスの発生源となった湖北省の武漢市では感染者を治療するための病院が完成。病床数は1000床で、この日から患者の受け入れを開始した。同病院は7500人を超える建設作業員を投入し、着工から8日で完成。武漢市内では病床数1600床の2つ目の病院が5日に患者の受け入れを開始する。

米国は先週、約200人の自国民を中国から退避させたが、今週も航空機を派遣して退避を継続する。ロシアもこの日、自国民の退避を開始する。

香港はこの日、中国本土との検問所をさらに4カ所閉鎖すると発表。これにより、閉鎖されていない検問所は残り3カ所となる。

オーストラリアはこれまでに243人を中国から退避。退避した人たちは沖合の島にしばらく隔離される。カナダは自国民のうち304人が退避を希望しているとしている。

<中国の死者数、SARS上回る>

中国国家衛生健康委員会によると、2日時点で死者数は前日から57人増え、361人となった。中国国内の死者は2002─03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回った。新たに感染が確認された人は2829人で、感染者数は1万7205人に達した。

春節の連休明け最初の取引となった3日の中国株式市場<.SSEC> は急落。1日で時価総額約3930億ドルが吹き飛んだ。

WHOによると、これまでに中国以外では米国、日本、タイ、香港、英国などを含む世界23カ国・地域で感染が確認されている。

*内容を追加しました。