SNSに革命を起こす、インスタグラムCEOの「野望」【前編】

2020/2/1

ディストピアの予感

ある午後、インスタグラムのアダム・モッセーリCEOは、重要プロジェクトについて話し合うためにスタッフを集めた。
そのプロジェクトとは、「いいね!」の数を非表示にしようというもの。ユーザーは、自分の投稿についたハートマークの「いいね!」の数を見ることはできるが、ほかの人の「いいね!」数は見えなくなる。
このプロジェクトはチームの間で「プロジェクト・デイジー」と呼ばれている。
「いいね!」はソーシャルメディア上のインフルエンサー経済を支える通貨であり、カーダシアン一家の熱狂的なファンを刺激したり、多くの一般人に幸福ホルモンを注入したりしている。
だが最近では、インスタグラムがある種の「権威」と見なされるという、想定外の事態が生じていることに、モッセーリは気をもんでいた。
モッセーリの脳裏からは、テック社会の陰鬱な近未来を描いたドラマ『ブラック・ミラー』の、とあるエピソードが離れなかった。登場人物たちが、関わり合った全ての人に5段階で評価をつけるという内容だ(その結末は悲惨なことになる)。
アダム・モッセーリ(Ricky Rhodes/The New York Times)

フェイスブックの教訓

テクノロジーがもたらす予期せぬ影響については、モッセーリにもある程度の知識がある。