清水律子 藤田淳子

[東京 29日 ロイター] - 前田道路<1883.T>の今枝良三社長は29日、ロイターとのインタビューで、前田建設工業<1824.T>が実施している株式公開買い付け(TOB)への対抗策として、友好的な第三者である「ホワイトナイト(白馬の騎士)」も選択肢のひとつだと述べた。現在、複数の先と接触しているという。

今枝社長は、ホワイトナイトについて「選択肢のひとつだ」と述べ「オファーまではいかないが、共通のシナジーがないかなど、複数の先と接触を図っている」とした。相手先は、事業会社もファンドもあり「ファンドのほうが多い」という。

ホワイトナイトになり得る先としては「前田道路の独自性が守られること」とし、資産の切り売りや社員の士気の低下につながるようなリストラを行わないことを挙げた。

前田建設のTOBには下限が設けられていないことから、現状より前田建設の保有株比率が高まる可能性は高く「不利な立場にあると思う」と述べた。

今枝社長は「道路舗装業界の再編や効率化を考えていくことは必要。ただ、手を組む相手が前田建設では大きなステップアップはできない。向かう方向が違う」と述べ、前田建設の子会社となることは拒否する姿勢だ。

前田建設が昨年12月に前田道路に提示したTOBの提案には、前田道路・前田建設両社の株主である香港を拠点とするヘッジファンド、オアシス・マネジメントが前田建設と面会した際、オアシスが前田道路にTOBを行った場合に前田建設はどうするか聞かれたことから、前田建設が先駆けて友好的なTOBを行う旨が書かれていたという。

ただ、前田道路は、オアシスから資本効率改善に関する提案は受けていたものの、経営に関する指摘をされたことはなく、オアシスが前田道路にTOBを仕掛けることは「考え難い」(前田道路幹部)とみている。実際、オアシスから直接、TOBに関する提案を受けたことはなく、前田建設から独立するか、統合に向かうかという資本関係見直しについては聞かれていたという。

一方、前田道路の大株主である英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは、前田建設との資本関係を解消したほうが、前田道路の企業価値は上がると指摘していたという。

資本効率改善は、前田道路としても課題と受け止めており、増配や自社株買いなどを進めてきた。

前田建設が過半数を保有し連結子会社となれば「どのようにでもできる」とし、これまで培ってきた前田道路の独自性が損なわれる懸念があると指摘した。

前田建設のTOBに対して前田道路の労働組合にアンケートを行ったところ、組合員の98.2%から回答があり、反対が84.1%あったという。

同社には、これまで人員削減などのリストラを行ってこなかったことなどを背景にした労使の信頼関係があるほか、前田建設にあまり依存せずに、様々な外部の顧客と仕事をしてきたことが成長の背景にあると説明。今枝社長は「独自性によって企業価値を高めてきた。これは株主にとっても最大の利益」と述べ、「外部との取引を増やさないと、企業は成長できない。子会社化されれば、親会社の意向が強まり、親会社の仕事が増える」と懸念を示した。

前田建設は、前田道路に対して敵対的なTOBを実施している。1株3950円で、51%の保有(現在、24.68%保有)への引き上げを目指す。TOB期間は1月21日から3月4日。29日の前田道路終値は3620円。

(編集:青山敦子)