[フランクフルト 23日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は23日の定例理事会で主要政策金利を据え置くとともに、インフレ目標や金融政策を巡る「戦略的見直し」を開始した。

主要政策金利のリファイナンス金利は0.00%、限界貸出金利は0.25%、中銀預金金利はマイナス0.50%にそれぞれ据え置いた。

理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。

<緩やかな成長>

前回理事会以降に入手された情報は、ユーロ圏の経済成長は進んでいるものの緩やかであるとのわれわれの基調シナリオと一致している。

<製造業部門の弱さが成長の足かせ>

製造業部門の弱さが引き続きユーロ圏の経済成長の勢いの足かせとなっている。

<インフレ率の収束>

企業や家計に対する借り入れ条件の緩和は個人消費や設備投資を支援する。これはユーロ圏の拡大や域内の価格圧力増大を維持し、結果として、われわれの中期的な目標に向けたインフレ率の安定的な収束につながる。

<基調的なインフレ率の緩やかな上昇>

インフレ率の動向は全体的に抑制されたままだが、基調的なインフレ率は予想に沿って緩やかに上昇しているという兆候が一部存在する。

<政策調整の用意>

理事会はインフレ率が上下対称的なコミットメントに沿って持続的な方法で目標に向かうことを確保するために、必要に応じてあらゆる政策を調整する用意ができている。

<インフレの波及>

労働市場の引き締まりに伴い労働コスト圧力が増す半面、成長の勢いは鈍り、インフレの波及を遅らせている。

インフレはECBの金融政策措置や経済拡大の継続、底堅い賃金の伸びに支えられ、中期的に上昇するとみられる。

<貿易問題を注視>

貿易問題はECBの政策検討や下振れリスクの見極めにおいて重要な要素と言える。

<拡大>

世界経済活動の幾分の減速にもかかわらず、ユーロ圏の拡大は好ましい金融環境、賃金上昇に伴う雇用の一段の増加、小幅に拡張的な財政スタンスに引き続き支援される見通しだ。

<成長リスクは下向き>

ユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクは、地政学的要因や保護主義の台頭、新興国市場の脆弱性に絡み、引き続き下向きに傾いている。しかし、国際貿易を巡る不確実性が一部後退する中、リスクは以前ほど顕著ではない。

<長期的緩和が必要>

中期的な基調インフレ圧力および総合インフレ動向を後押しするため、長期にわたり依然かなりの金融緩和が必要になる。

<物価動向など注視>

物価動向に加え、金融政策が経済に及ぼす効果を注視していく。

<金融状況は良好>

現在展開している金融政策対応は、経済のあらゆる分野に対する良好な金融状況の基盤になっている。

<気候変動>

気候変動への対処や生物多様性の保護を強く求める。これらはすべての人々の責任と考える。

<一段の見直し>

われわれはくまなく精査をしていく。インフレをどのように評価していくかを巡っては明らかに検討する必要がある。

<不動産はインフレに含むべきか>

これまでも表明してきた通り、われわれはすべてを検証する。インフレをどのように推し量るかは、明らかにわれわれが検証する必要があることだ。

<利用可能な措置>

政策措置が必要になった場合、イールドカーブのどちら側で措置を実施したいのか考えなくてはならない。これにより、どのような措置が利用されるのかが決定される。

<気候変動の脅威>

気候変動が金融安定への脅威になるという国際決済銀行(BIS)の報告に反論することは容易ではないだろう。さらに多くの場合、こうした脅威やリスクは評価されたことも検討されたこともほとんどない。

<歓迎される行動>

(気候変動を巡る)BISの行動や提案、英中銀のカーニー総裁ら中銀が提言した行動は正当だ。また、民間セクターも措置を講じていることを個人的に満足している。

また、これまでに見られているように、国際会計基準を設定する会計事務所や資産管理会社大手などの関与は歓迎される。

<包括的な見直し>

われわれは多くの問題について見直しを行う。それはわれわれがどのように実施するのか、どのように評価するのか、どのような手段を用いるのか、どのように意思疎通するのかについてだ。意思決定や公表、使用する文言、到達範囲、あらゆる利害関係者とのエンゲージメントなど意思疎通に関する全ての方法を網羅するだろう。

これら全てが戦略の要であり、そのため、広範囲な見直しになる。

<インフレ目標>

インフレ目標に関しては運営方針がある。われわれには明確な戦略があり、それが今日まで行われてきた政策決定の要因となってきた。

これは引き続き、(新たな)戦略が採用されるまでのしばらくの間行われる政策決定につながるだろう。

<通商合意の影響>

昨年12月下旬に開催した前回理事会以降に起こった重要な出来事の1つが、米中間の交渉における「第1段階」の合意締結だ。そして、それ自体が様々な結果をもたらしている。不確実性に関連するものでは、消滅したは言えないまでもわずかに低下しているのは確かだ。

<見直し結果の先取り行わず>

われわれは多くの問題を検討していく。複数の見解が提案されるだろう。見直しには多くの労力が費やされる見込みだ。どのように実施していくのかを排除したり、予測したりすることはしない。なぜなら、それがわれわれの戦略的見直しにおける核心だからだ。