田巻一彦

[東京 21日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は21日午後3時半から予定されている会見で、米中通商協議合意のインパクトや政府の経済対策の効果などについて見解を表明する見通し。そこから次の政策変更の時期や中身などのヒントが得られるのか──。注目すべき発言内容を以下に列挙した。

1.米中通商協議の「第1弾」合意や、政府の経済対策の効果と内外経済

・関税引き上げ合戦が回避されたことは評価すると発言すると予想されるが、次の「第2弾」は交渉決着まで長期化する観測もある。貿易量が増加に転じると言及するのか、企業心理が好転して、設備投資が増加基調に転じると発言するのかが注目点。

・政府の経済対策で、成長率が押し上げられると説明する見通し。しかし、物価上昇率に加速の兆しは見えていない。その理由について、新しい知見を示すかどうか。今まで通りの見解を繰り返す場合、物価目標2%への到達が難しいという市場の印象を一段と高める可能性がある。

2.次の政策変更の時期と中身

・物価上昇に向けたモメンタムが損なわれるリスクに関する発言が、前回会見時と比べ、どのように変化しているか。発言が変わっていれば、次の政策変更のヒントになりそうだ。モメンタムに危惧があるとほのめかした場合、次回の決定会合での政策変更の可能性があると類推できる。日銀は2020年度の成長率見通しを引き上げており、モメンタムは維持されているとの見解は変わらないと思われるが、その場合は政策維持の期間が長期化する可能性が高い。

・仮に政策変更する場合、マイナス金利の深掘りを排除しないとの従来からの見解を維持するのか、維持しつつ、その他の選択肢の可能性に関し、ヒントになるような材料を提供するのか、その表現の微妙な変化に注目したい。

3.マイナス金利長期化の副作用で、新しい言及があるのか

・マイナス金利の長期化が現実の問題として、金融市場では意識されている。その副作用に関し、従来に比べて踏み込んだ表現をするのか、それとも変わらないのかによって、副作用問題に関する日銀の認識を推し量ることが可能となる。生保などのいわゆる「機関投資家」のデメリットだけでなく、銀行の受ける「打撃」に具体的に言及するかどうかも、重要なポイントになる。

4.長期、超長期ゾーンなどイールドカーブの現状評価

・前回の会見で、黒田総裁は金利のスティープ化を容認する発言をして、市場の注目を集めた。その結果、小幅にイールドカーブはスティープ化したが、この現状をどのように評価しているのか、円債市場関係者の中には「最も注目している」(国内銀行)との声もある。

・長期、超長期ゾーン金利の一段の上昇を望んでいる場合、日銀の国債買い入れ量を大胆に減少させることも選択肢に入れているのか、黒田総裁の発言に対する市場の「感応度」はかなり高そうだ。