[香港/北京 17日 ロイター] - モバイル決済「アリペイ(支付宝)」を展開する中国のアント・フィナンシャル[ANTFIN.UL]が、同社の非上場株式について、企業評価額を2000億ドルとする価格水準での売却を目指していることが、複数の関係者の話で明らかになった。

中国のアリババ集団<BABA.N> <9988.HK>傘下にあるアントは、2018年の資金調達時は企業評価額が1500億ドルだった。関係筋によると、同社は将来的に香港と中国本土に上場する計画を整えるため、準備を進めているという。

アントは企業価値10億ドル超の未上場IT企業「ユニコーン」の中でも世界最大手。今年中の新規株式公開(IPO)に向け準備しているとの観測が強まっている。

関係者によると、アントは上場前に株主構成を整理したい考えで、同社の助言会社は最近、非上場株の売却先候補に接触した。

アントの広報担当者は、IPOの計画はないと述べた。

別の関係者は、同社の発行済み株式のうち、少数が昨年終盤に企業評価額2000億ドルの水準で取引されたと明らかにした。

昨年に米シェアオフィスのウィーワークの企業価値が大暴落したことを受け、投資家は世界的にユニコーンの価値を慎重に見極める傾向を示している。

アントの株主の一部は同社株を資産運用商品に組み込んでいるため、技術的に直接保有分が減っている可能性があり、IPOの承認手続きを複雑にする可能性がある。

また、関係筋の1人によると、一部の同社幹部は 、アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が管理するリミテッドパートナー(LP)制度を通じて保有している株式の一部を売却している。

中国国内のIPOでは、大株主あるいは実質的に経営を掌握する者による株式売却が禁じられる3年間のロックアップ期間が設けられている。

アリババは昨年、アントの税引き前利益の37.5%に対する権利を放棄する代わりにアント株の3分の1を取得している。

アリババによると、アリペイは電子財布サービスにおける世界各地の現地パートナーを含め、年間のアクティブユーザー数が約12億人に達しており、そのうち9億人が中国にいる。

一方、事情に詳しい関係筋によると、中国政府は金融リスク抑制の取り組みの一環として、「準金融」会社の上場を実質的に禁止しており、アントにも適用されるという。

同筋は、アントが中国証券監督管理委員会(証監会)からのIPO承認取得で進展していないと明らかにした。

証監会からコメントは得られていない。