和田崇彦 木原麗花

[東京 16日 ロイター] - 日銀は20―21日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める公算が大きい。生産の不振や消費増税に伴う個人消費の悪化で2019年10―12月期は大幅なマイナス成長になるとみられるものの、日銀内では20年度にかけて海外経済回復や政府の経済対策で国内経済も緩やかに回復するとの見方が多い。一方、今後の米中貿易交渉を巡る不透明感など海外経済の下振れリスクへの警戒感は維持する見通しだ。

<マーケットの波乱は鎮静化>

米国とイランの軍事的緊張の高まりから、年明けの金融市場では株安・円高が進行。8日にはイランがイラクの米軍駐留基地を攻撃するなど緊張が一段と高まったが、トランプ米大統領が軍事力行使を否定するとマーケットのリスク回避姿勢が後退。一時64ドル台に急伸したNY原油先物も、足元では58ドル台と、中東の軍事的緊張が高まる前の水準を下回って推移している。

日本の実体経済への影響は出ておらず、米中両国が貿易交渉で「第1弾」の合意に署名したことも、日銀が追加緩和を見送る一因となりそうだ。

このため、今回の金融政策決定会合で、日銀は2%の物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに「注意が必要な間」、政策金利は「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移する」とするフォワードガイダンスを据え置く公算が大きい。物価目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まれば、躊躇なく追加緩和を打ち出す方針も改めて示すとみられる。

ただ、米中貿易交渉については、今後の交渉の行方にまだ不透明感が残るとの見方が日銀内にはあり、海外経済の下振れリスクへの警戒感は維持する見通し。

<内外需カップリングで回復へ、個人消費は指標見極め>

一方、今回の会合で取りまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、20年度の成長率見通しを小幅に引き上げる公算が大きい。

19年の国内景気は、海外経済の減速による外需の不振を、堅調な設備投資意欲など内需が支えてきた。日銀内では、20年度に向けて内外需の「カップリング」で国内景気は回復に向かうとの見方が出ている。

自動車関連を中心とする生産の不振、消費税率引き上げや自然災害による個人消費の低迷で、19年10─12月期の実質国内総生産(GDP)は大幅なマイナスになるとの見方が日銀内では目立つ。しかし、20年1―3月期には世界経済の回復に合わせてプラス成長に戻り、20年度入り後は政府の経済対策の効果にも支えられて国内経済は回復軌道をたどるとみられている。

15日に公表された日銀の地域経済報告(さくらリポート)では、全9地域中、東海など3地域の景気判断が引き下げられたが、消費増税で注目された個人消費の判断は全地域で据え置かれた。清水季子名古屋支店長は「初売りも活況だ」と発言。消費増税後の消費の落ち込みは「小幅にとどまるとみている」と述べている。

しかし、消費関連指標は昨年11月までのデータしか明らかになっておらず、個人消費が堅調に回復していることは確認できていない。日銀内では、消費税率引き上げの影響が本当に後退しているか、データの蓄積を待ちたいとの声が出ている。

物価は2%に向けて緩やかに上昇率を高めるとの見通しを維持する公算が大きい。日銀は人件費上昇分などを価格に上乗せする動きがじわりと広がっていることに加え、需給ギャップもプラス圏で推移、家計の値上げ許容度の高まりなど物価の下支え要因は多いとみている。政府の経済対策も需給ギャップの押し上げ要因の1つになりそうだ。

(編集:石田仁志)