【池内恵】日本人が知らない「米イラン40年抗争」の本質
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米イラン問題についてNewsPicks編集部から若い記者たちがいっぱい来たので、ざっと話したところ、こういう記事になりました。投資していて元気いいところはいいですね。
権威・池内先生にお話を聞いてきました。
大変濃い内容で、必読です!
個人的には、イランが「負け組の論理」を振りかざしている、というところに非常に共感しました。
イランでとても大事にされる歴史上の人物がイスラム教シーア派第3代指導者の「ホセイン」という人物です。
ホセインやその一派は、1300年以上前に圧倒的多数派であるスンニ派と戦った末、いわば「迫害」とも言えるような形で虐殺されました。
この悲惨な出来事(カルバラーの戦い)、歴史の授業ではみっちり教わりますし、今もホセインの命日には男たちが道に繰り出して鎖で自分の体を打ちながら大声でむせび泣き、彼の殉教を悼む訳です。
「いざ、鎌倉」みたいなイメージで「いざ、ホセイン」「いざ、カルバラー」と言われたりもします。
当然、この「迫害された歴史」は政治利用されます。
軍事パレードのスローガンに「我々の道は、ホセインの道だ」というものがあったり、今回のソレイマニ司令官追悼式典でも「ホセインの遺志を実現するまで復讐をやめない」といったメッセージを叫んでいる人もいたようです。
ちなみに、イラン・イラク戦争もイランにとっては「被害」の歴史でしょう。「巨悪」「無神論者」サッダームの侵攻で始まった戦争で、イランの味方をしてくれる国はいなかった。アメリカやサウジ、ソ連までもがサッダームに加勢して化学兵器も使われ、100万人以上が命を落としました。
あの戦争で死んだ人も、イランでは「殉教者」と呼ばれ、イランの現在の対外関係の考え方のベースになっている気がします。
ただ、池内先生が指摘する通り、中東の大国イランが負け組の論理を振りかざすのは歪んでいる。イランもそれには薄々勘付きながらも、今や「シーア派の国」だし、ロジックで解決できない感情があるんだろうなあと思います。中国、北朝鮮、ロシアなどアメリカと対立する国はいくつかありますが、今現在、最も前のめりでアメリカと敵対している国はイランでしょう。軍事力の差から考えれば無謀とも言える喧嘩なのに、一歩も引かず、ガチで戦争を始めそうな危うさのあるイラン。その理由を、池内恵教授に解説してもらいました。
両国の対立の大きな背景には、いまだ解決の糸口が見えないイスラエル問題があるわけですが、それだけではないようです。歴史的な経緯や、イラン国内問題、ISなど、複雑な要素が絡み合っていることがわかります。
明日は、イランを起点に中東情勢をまるっとやさしく解説するインフォグラフィックスの予定です。イスラエル問題については、週の後半にアメリカの国内事情から検証していきます。