[東京 5日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>前会長のカルロス・ゴーン被告(65)が保釈中にレバノンへ逃亡したことについて、東京地検は5日、斎藤隆博・次席検事の「我が国の司法手続きを殊更に無視したものであり、犯罪に当たり得る行為で誠に遺憾だ」などと非難するコメントを発表した。「逃亡の経緯などを明らかにし、適切に対処する」としている。

ゴーン被告は出国後、日本の司法制度について「有罪が前提で差別が横行し、基本的人権が否定されている」などとする声明を公表していた。これに対し次席検事は「法廷において合理的な疑いを超えて立証できると判断した場合に限り、被疑者を起訴している」と反論。日本では「全ての被告人に公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利を保障している」と指摘した。

ゴーン被告については、1)豊富な資金力と多数の海外拠点を持ち、逃亡が容易だった、2)国内外で多様な人脈と大きな影響力を持ち、事件関係者などに働きかけ、証拠を隠滅する現実的な危険性があった、3)勾留中に妻などを介して事件関係者に対する働きかけを企図していた――ことから「勾留することは必要やむを得ないものであった」とした。

こうした事情があったにもかかわらず、昨年4月25日に保釈された後、ゴーン被告は弁護人らと自由に連絡をとって公判準備を行うことが可能な状態にあったと主張。検察は「公正かつ適正な刑事裁判を実現すべく、法に定められた手続きに基づき、ゴーン被告の弁護人に証拠を開示するなどの公判活動を行っており、被告人の権利が十分に保障されていたのは明らかである」と断言した。

ゴーン被告が「必ず出頭するとの誓約を自ら破り、国外に逃亡したのは、我が国の裁判所による審判に服することを嫌い、自らの犯罪に対する刑罰を逃れようとしたに過ぎず、その行為が正当化される余地はない」と非難した。

(白木真紀)