[パリ 24日 ロイター] - 米ボーイング<BA.N>の次期最高経営責任者(CEO)に決まったデービッド・カルホーン氏は、主力旅客機「737MAX」の運航停止問題に加え、ブラジルの小型機メーカー、エンブラエル<EMBR3.SA>の商用機部門買収計画を巡る欧州連合(EU)当局の厳しい審査に直面する。

事情に詳しい2人の関係筋が明らかにしたところによると、審査を進めているEUの欧州委員会は、過去20年余りの販促活動に関する150万ページ強の資料提出を求めたという。膨大な資料請求は、買収が成立すれば世界の主要な航空機メーカーが3社から2社に減るという欧州の懸念を浮き彫りにしているという。

ボーイングは23日、2件の墜落事故を起こして運航停止となった737MAXを巡る混乱の責任を取って辞任したデニス・ミューレンバーグCEOの後任にカルホーン会長を充てる人事を発表した。[nL4N28X3F9]

1人の業界筋によると、カルホーン氏は米ゼネラル・エレクトリック(GE)<GE.N>の幹部だった時代からエンブラエルについてよく知っており、買収を強く推進する見通し。

エンブラエルの商業機部門の株式80%を42億ドルで買収する計画は当初、2019年に手続きが完了すると見込まれていたが、欧州委が10月に本格審査を行う方針を決めたため、先送りとなった。審査は2月下旬まで続くとみられる。[nL3N26P0DS][nL3N26E314]

米国の関係筋は、主要な航空機メーカーが3社から2社に減るという見方を否定。エアバス<AIR.PA>はカナダ同業ボンバルディアの商用機事業買収によって既存の大型機に加えてリージョナル機市場にも参入したが、2つの市場は別々に存在すると指摘。

ボーイングを含む全当事者の弁護団は、欧州委が買収計画に対する「異議告知書」を出すかどうかに注目している。同文書を受領すれば、承認獲得に向けた交渉が可能になるからだ。

欧州委などからコメントは得られていない。

エンブラエル部門買収計画は米国、日本、中国の当局によって既に承認されており、ブラジルは近く承認の予備決定を確定するとみられる。

ボーイングを巡っては、欧州の航空安全当局が737MAXについて調査を進めているほか、航空機補助金を巡り米政府がエアバスの航空機などに追加関税を発動させたのを受け、EUが2020年に報復関税を導入する可能性が高い。

関係者によると、エアバスはエンブラエル部門買収を審査しているEUの当局者らと何度も接触しており、3月にはギヨム・フォーリー次期CEOが競争政策担当の欧州委と面会したという。

米業界筋は、審査の早い段階で首脳級が接触するのは異例だと指摘。ブラジルではエアバスが同買収計画に反対を唱えたとの報道がある。

エアバスの広報担当者は、同計画を阻止するよう同社がEUに働き掛けているとの見方は「根拠がない」とコメントした。