投資家のポール・グレアムは、自身のTwitterネットワークに対して、自分の人生を変えた本を教えてほしいと依頼した。
Y Combinator創業者の呼びかけ
超がつくほど頭のよい人物に「お薦めの本」を紹介してもらうことは、どんな場合でも役に立つ。ただ、もっと素晴らしいことがある。頭の良い人物たちが今興味を持っている本だけでなく、「彼らの人生を変えた本」を教えてもらうことだ。
これこそまさに、起業家でY Combinatorの創業者であるポール・グレアムが、数百万人いるTwitterのフォロワーに対して共有を呼びかけたことだ。
Paul Graham@paulg
「読んで人生が変わった本を1冊挙げるとしたら何を選ぶ?(質問があれば、ht@rivatezまで)」
投稿を受けて、洪水のごとく答えが押し寄せた。なかには、その価値が疑わしい投稿もあったが、創業者や投資家、経営幹部などスタートアップの有名人たちからのものが多かった。以下では、とくに興味深いベストな投稿を紹介していこう。
ただ、断わっておくが、このスレッドを読み進むと、読むべき本が増えすぎるかもしれない。少なくともLEADxの創業者、ケヴィン・クルーゼはそうなったようだ。
Kevin Kruse@Kruse
@paulg @rivatezへの返信
「『いいね』が20個以上ついた本を全部買ったら、100ドル使ってしまったよ」
人生が変わった本を1冊挙げる
1. 『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・ハインライン著(邦訳:早川書房)
グレアムはまず、会話の糸口を作るために自身の人生を変えた本を紹介した。『月は無慈悲な夜の女王』は、植民地化された未来の月における反乱を描いた、SF小説の古典的名作だ。
SFに強い影響を受けたというビジネス界の巨人は、彼だけではない。イーロン・マスクからビル・ゲイツまで、あらゆる人物が、いかにしてSFが自身の性格やキャリアを形成したかを公表している。
グレアムは、この小説を読んで「人工知能(AI)を扱いたいと思うようになり、そこからLispへとつながった」と説明する。Lispは、グレアムがプロとして最初の業績をあげたプログラミング言語だ。
2. 『バーバリアンデイズ~あるサーファーの人生哲学~』ウィリアム・フィネガン著(邦訳:エイアンドエフ)
もっとアウトドア志向の創業者たちもいる。起業家からコンサルタントに転身したレイモン・カチョーは、ピューリッツァー賞を受賞した、このベテラン・サーファーの回想録について、以下のように書いている。
「私が注意を払っていないことが、自分にとって重要なのかもしれないと気づかせてくれた。最後には、自分の人生を振り返る旅をした気分になった」
サーフィンが、どのようにスタートアップでの仕事に影響を与えたかに言及した創業者は、ほかにも複数いた。
3. 『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド著(邦訳:草思社)
500 Startupsの創業者デイヴ・マクルーアは『銃・病原菌・鉄』を挙げたが、この本が自分の人生をどのように変えたかについては、その短いツイートには書いていない。
しかし、西洋人が世界を支配するうえで助けとなった隠された要因の数々が、企業創業者の大局的なものの捉え方や世界の見方を変えることに影響したことを読み取るのは、さほど難しくはない。
Amazonによると、ピューリッツァー賞を受賞したこの本は「人種に基づいた人類の歴史理論を解体する」ものだ。
4. 『いま、目覚めゆくあなたへ』マイケル・シンガー著(邦訳:風雲舎)
クリエイティブモーニングズ(CreativeMornings)の創業者でデザイナー、そしてブロガーのティナ・ロス・アイゼンバーグは、スピリチュアルな方向へ進み、『いま、目覚めゆくあなたへ』を推薦した。フューチャリストのレイ・カーツワイルはこの本について、「精神的探求から日々の苦難まで、人生で成功を納める方法をテーマにした輝かしい専門書」と呼んだ。
5. 『Extreme Ownership(究極のオーナーシップ)』Jocko Willink、Leif Babin著
今度はスピリチュアル本ではなく、もっとリアルな本だ。Copyedit Momの共同創業者であるナタリー・バットとフェイス・ハフは、米海軍特殊部隊に所属していた2人の人物によるこの本が、夢を現実にするよう後押ししてくれたと書いている。
「@jockowillinkと@LeifBabinの『究極のオーナーシップ』は、コピーエディット・マムの立ち上げを助けてくれた! アイデアを実行に移すときのアドレナリン注射のようだった」と絶賛のツイートを寄せている。
6. 『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル著(邦訳:大和書房)
スタンフォード大学の心理学者が、ストレスを目標達成のためのエネルギーに変える方法を記した『ストレスを力に変える教科書』。有名な起業家兼投資家であるキース・ラボアのような、エネルギッシュにキャリアを築き上げてきた人物にとって、この本が人生を変えるものだったことは想像できるだろう。
7. 『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー著(邦訳:SBクリエイティブ)
前述のキース・ラボアが、睡眠研究の第一人者による著作『睡眠こそ最強の解決策である』も推薦しているのは不思議ではないだろう。心と身体にとって、十分な睡眠を取ることがなぜ重要かを説いたこの本を読んだ彼が、いつもより少し長いあいだ、目を閉じる時間を見つけられたらよいのだが。
8. 『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ著(邦訳:岩波書店 他)
紹介された本がすべて、自己啓発やビジネスの変革をテーマにしたものとは限らない。Sprinkle LabとWrapbookの共同創業者、キャメロン・ウッドウォードは、自身の人生を最も変えた1冊として、ロシアの古典小説『アンナ・カレーニナ』を挙げた。
この小説から学んだことは「小さな選択からもたらされる作用や、大きな結果をもたらす推測や思い込みに関する教訓」だったと、彼は説明している。
9. 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』リチャード・ファインマン著(邦訳:岩波書店)
もうひとつの風変わりな回答は、Y Combinatorのパートナーであるトレバー・ブラックウェルから寄せられた。物理学者の自伝である『ご冗談でしょう、ファインマンさん』について「ごく普通の人間でも物理学の問題が解けるのだと、初めて私にうっすら感じさせた本」とブラックウェルはツイートした。
ファインマンの脳が普通でないことは明らかだが、彼の生い立ちはごく普通で、最後はノーベル賞を取るに至った。どんな人でもすごいことができると、ブラックウェルは学んだそうだ。
10. 『独裁者のためのハンドブック』ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス著(邦訳:亜紀書房)
反面教師が、何かを学ぶ最善の方法になることもある。
創業者からスタートアップの幹部になったアンドレアス・クリンガーによると、『独裁者のためのハンドブック』は、基本的にその名が示すとおりの内容だが、「政治的不正を理解するための、単純なゲーム理論フレームワークを与えてくれたので」人生が変わったという。
11. 『人類が知っていること すべての短い歴史』ビル・ブライソン著(邦訳:新潮社)
Adlaの創業者ホリー・レスリーは「6歳のときに父からもらった本が、自分を取り巻く世界への興味を掻き立てた」と書いている。
それもそのはず。『人類が知っていること すべての短い歴史』は、ビッグバンから現在まで、ありとあらゆることを網羅している。世界中で愛されている、とても野心的なベストセラーだ。
12. 『エンダーのゲーム』オースン・スコット・カード著(邦訳:早川書房)
1980年代に映画化された名作SF小説。若い頃のマーク・ザッカーバーグのお気に入りだった。Pioneerの創業者でY Combinatorの元パートナーであるダニエル・グロスもまた、『エンダーのゲーム』を愛していた。
グロスがこの本から学んだポイントは「待てよ、子どもが責任者なのか? 大人じゃなくて?」 というものだという。「もっと主体性を持って行動するための自由を得ることができた」
13. 『ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール著(邦訳:NHK出版)
PayPalの創業者ピーター・ティールが、スタートアップ時代を振り返るこの本を「人生を変えた1冊」として挙げた創業者は多い。
投資家のキャサリン・ボイルは「『ゼロ・トゥ・ワン』はすべてを変えた」と書いた。作家のボニー・カヴォッシーや、Quilletteの創業者クレア・レーマン、弁護士のマンダー・カゲイドも、揃ってこれに同調した。
あなたの人生を一番大きく変えた本は、何だろうか。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman、翻訳:藤原聡美/ガリレオ、写真:kevron2001/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.