[ロンドン 19日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は19日に開いた金融政策委員会で、政策金利を0.75%に据え置くことを7対2で決定した。12日投開票の総選挙でジョンソン首相率いる与党・保守党が圧勝したものの、中銀はこれにより欧州連合(EU)離脱を巡る先行き不透明性がどの程度解消するのか判断するのは時期尚早との見解を示した。

今回の決定会合でも前回と同様、ソーンダーズ委員とハスケル委員が、労働市場に失速の兆候が出ていることに中銀は先手を打って対応する必要があるとして利下げを主張。他の7人の委員は、EU離脱を巡る先行き不透明性の緩和のほか、政府の歳出拡大、世界的な成長回復などが追い風となり英経済成長は2020年初頭には上向くとの考えから、行動を起こすのは現時点では時期尚早との見方を示した。

中銀は声明で「最近の国内の政治的な展開を受け、企業と家計の間で出ていた先行き不透明感が後退したとの証拠はまだ得られていない」とした。また、米中通商問題を巡る緊張が「部分的に」緩和したことに言及し、世界経済の見通しは改善したとの見方を表明。ただ「世界的な経済成長が安定しない場合、もしくはEU離脱を巡る不確実性が根強く継続した場合、金融政策を通して、英国の予想される経済成長とインフレを強化する必要が出てくる可能性がある」とした。

一方で、こうしたリスクが顕在化せず、経済成長が予想通りの展開になれば、将来的には「緩やか、かつ限定的な」利上げが必要になる公算もあるとの見解も示した。

インベステックのエコノミスト、フィリップ・ショー氏は「金融政策委員会はEU離脱を巡る見通しが若干明確になったことなど、ここ数カ月の展開を考慮した」と指摘。ただ、来年にかけて中銀が利上げに動く公算は小さいとの見方を示した。

中銀は景気見通しについて、今年10─12月期の経済成長率は0.1%になるとし、従来の0.2%から下方修正した。

活況を呈している英国の労働市場が失速しつつある一段の兆候が出ていると指摘。ただ単位労働コストは中銀が望むよりも大きくインフレを押し上げる可能性があるペースで上昇を続けているとの見解も示した。また、企業が潜在能力を下回る水準で営業していることから、広範な経済の中で供給過剰が若干拡大したとの認識も示した。

一部エコノミストの間では、労働市場の引き締まりなどに起因する基調的な圧力を受け、中銀は来年は利上げに動く可能性もあるとの見方が出ている。ただ利下げの公算の方が大きいとの見方が大勢で、金融市場では、2020年末までに25ベーシスポイント(bp)の利下げが1回実施される確率は約50%との見方が織り込まれていた。この日の決定会合を受け、この確率はやや低下した。

今回の決定会合で利下げを主張した委員が前回と同じ2人にとどまったことで、外国為替市場で英ポンド相場が上昇した。

カーニー総裁はあと1回の金融政策委員会を残し、来年1月31日に退任する。