[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日、金融政策決定会合後の会見で、当面の金融政策運営について、海外リスクが一頃に比べて若干低下したのは事実だが、依然としてリスクは高い水準にあるとして、引き続き緩和方向を意識したスタンスを維持する必要があるとの認識を示した。

ただ「低金利環境が続く下での金融機関への影響も十分注視していかなければならない」とも強調した。

黒田総裁はマイナス金利深掘りの可能性について問われると「金融政策として必要な事態になればあり得る」と従来のスタンスを繰り返しつつ、「効果と副作用は常に点検していく必要がある」と語った。コストへの配慮は「今後さらに必要性が高まっていく可能性がある」と警戒感を示した。

マイナス金利は銀行の収益を圧迫するため、一部銀行は預金者に手数料を課す「口座維持手数料」の導入を検討している。

これについて黒田総裁は「各金融機関の経営判断に関わることなので具体的なコメントは差し控える」としながらも、「金融機関が提供するサービスについては、当然そのコストに見合った手数料が必要になるのは当然だ」と述べ、理解を示した。

国際通貨基金(IMF)がゼロ%程度の金利ターゲットを10年物国債からより期間の短い国債に変更すべきと提言していることに関しては、現時点では「短めのところターゲットにすることは考えていない」と否定的な見解を示したが、「将来、そういうことが絶対にないかと言われれば、今後の経済・物価・金融情勢で決めていく」と含みも残した。

IMFはより期間の短い国債に変更すれば、イールドカーブをスティープ化することができるとの見方を示している。

黒田総裁はターゲットの変更は否定したものの、超長期ゾーンの金利については「もうちょっとスティープになっても良いのではないかと思っている」と本音を漏らした。

日銀は超長期ゾーンの金利が下がりすぎると、保険や年金の運用利回りの低下などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があると警戒している。

IMFは現在2%に設定している物価目標をレンジで示すことも提言しているが、黒田総裁は「2%の目標は堅持する必要があり、できるだけ早期の実現に向けて引き続き粘り強く金融緩和を続ける」と強調した。

政府の経済対策については「財政再建の目標を堅持しており、その下で必要な経済対策を講じることは問題ない」と評価した上で「イールドカーブコントロールで大幅な金融緩和を継続しているので、ポリシーミックスとしても大きな効果があるのではないか」と語った。

*内容を更新しました。

(志田義寧 和田崇彦 浜田寛子 編集:石田仁志)