【追悼】中村哲医師「ペシャワールに赴任したきっかけは、原始のモンシロチョウを見たから」「新・家の履歴書」より - 稲泉 連 - 文春オンライン
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【ペシャワール会 中村哲さんとの思い出】
BCG時代、当時上司だった太田直樹さん(現在は総務省の政策アドバイザーなど)に誘って頂いたイベントで中村哲さんから直接お話を伺う機会がありました。2008年か2009年かな。
中村哲さんは、医師なのに医療アプローチに留まらずアフガニスタンの課題の真因=水に着目するスマートさと、日本人なのに遠いアフガニスタンの地で用水路を作ってしまうパッションを合わせ持ったスーパーマン。その偉業に圧倒されたのを今でも思い出します。しかも、それを全く偉ぶらず淡々とお話になられる姿はまさに「現代のキリスト」…当時、コンサルタントとして昼夜問わずガツガツ働いていた自分にとって、こんな人いるんだというのはものすごい驚きだったと思います。
思い出深いのは最後の質問タイム。その頃、ちょうどプロポーズしたんだか結婚したんだかぐらいだった自分は「中村さんがアフガニスタンでやっていることはすごいと思うのですが、日本にいるご家族とはどのようにバランスを取られているんですか?」と聞いてみたのでした。すると中村哲さんは少し困ったような表情をされて「若いあなたに伝わるかどうかわからないんですが…僕は家族って自分と妻と子どもだけじゃないと思うんですよね。自分の親や親戚も含めて家族なんじゃないかって。自分はほとんど家にはいなかったというが正直なところです。でも、僕以外の家族がちゃんと子どもを育ててくれたというか…そうそう、先日、子どもの結婚式にはちゃんと出ました。それで良いですかね。」と、真正面から答えてくれました。
それから、僕も大家族主義というか、いわゆる核家族だけが家族なわけじゃないという風に考えるようになりました。親にも頼るし、遠方に住む兄弟の家族ともできるだけみんなで会うようにする。なんなら友人も名誉家族みたいなものとして捉える。仕事を人生を捧げようと思うからこそ、家族を拡大解釈して大事にする。みたいな。
中村哲さんの今回の訃報はとてもショックなことですが、これまでやってこられた事業や、現地で育ててこられた人材は無くなりません。ご冥福をお祈りすると共に、アフガニスタンを始めとする紛争地域が平和になることを願います。