[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領とマクロン仏大統領は3日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を前に早くも火花を散らした。トランプ氏が欧州に防衛費負担を増やすよう求めたのに対し、マクロン氏はNATOが機能不全に陥っていると再び主張した。

ロンドンを訪れたトランプ大統領は、NATOが「脳死状態」としたマクロン大統領の発言について「非常に、非常に不快な発言だ」と記者団に語った。さらに、防衛費の支出目標である国内総生産(GDP)比2%の「達成義務を怠っている」国を米軍が守る必要があるのかと疑問を呈した。トランプ氏はドイツを名指しして防衛費負担の目標未達を批判してきた。

「NATOや通商面でいいように利用されるのは間違っているが、それが実際に起きている。許してはならない」と強調し、航空業界や欧州の「デジタル課税」を含む欧米間の通商問題にも言及した。

一方、マクロン氏はNATOを再び批判し、冷戦終結以降に明確な目的を打ち出せなかったことが大きな問題だと指摘。NATO加盟のトルコが過激派組織「イスラム国」の関連組織と協力関係にあることも非難した。

同日遅くにツイッターへの投稿で「NATOに資金を投じ、自国の兵士を軍事作戦に参加させて生命を危険にさらすのであれば、NATOの原則についてはっきりさせる必要がある」と訴えた。

NATO加盟国の首脳は3日夜、ロンドンのバッキンガム宮殿で開かれたエリザベス女王主催のレセプションに出席。首脳らは4日にロンドン郊外のホテルで議論を開始する。

<集団的自衛権巡り亀裂も>

トルコのエルドアン大統領は同日、トルコがテロ組織と見なすクルド人勢力の民兵組織、人民防衛部隊(YPG)組織をNATOとしてテロ組織と認定しなければ、バルト諸国とポーランドをロシアの脅威から守る計画に反対する方針を示した。

今年で創設70周年を迎えるNATOは有事の際に加盟国を防衛する集団的自衛権が条約で定められているが、ポーランドとバルト諸国の防衛計画を巡る足並みの乱れがNATOの結束に影を落としている。

ただ、トルコと英国、フランス、ドイツの首脳はこの日会談し、シリア情勢を巡り、文民に対するすべての攻撃を終わらせる必要があるとの見解で一致した。

英首相府の声明によると、4カ国の首脳は「難民の安全で自主的、持続可能な帰還に向けた条件を整えるために取り組む」と表明したほか、「いかなる形のテロに対しても戦いを継続する必要がある」と訴えた。

NATO首脳会議では、欧州、トルコ、カナダがトランプ大統領の批判に対応し、2024年までに約4000億ドルの防衛費を支出すると確約し、米国の拠出額削減に合意する見通し。

加盟国首脳はまた、拡大する中国の軍事活動を監視するための新たな戦略を承認し、宇宙空間を陸、海、空、サイバー空間と並ぶ「戦場」と認定する見通し。

*内容を追加して再送します。