[サンティアゴ 2日 ロイター] - チリ政府は2日、反政府デモや暴動の影響で打撃を受けている経済の立て直しに55億ドルを投じる方針を打ち出した。同国中央銀行が発表した10月の経済成長率は10年ぶりの大幅なマイナスとなった。

ブリオネス財務相は政府の成長率見通しを下方修正し、2019年は1.4%、20年は1─1.5%とした。わずか1カ月前に示した見通しでは今年が2%、来年は2.3%としていた。

同財務相は記者会見で「これは単なる数字ではない。多数の企業や雇用が危険にさらされているということだ」と警鐘を鳴らし、「暴力や略奪、破壊行為が経済を停滞させ、国民に多大な損失をもたらしている」と述べた。

チリでは10月以降、公共交通機関の運賃値上げを発端とする抗議活動が広がり、放火や略奪などに急速に発展。死者はこれまでに26人に上り、企業の損失は15億ドルを超える。通貨ペソも最安値に下落し、中銀は複数回、市場介入している。

ブリオネス財務相は、経済復興計画の一環として政府がインフラに24億ドルを投資すると明らかにした。雇用喪失に歯止めを掛け、中小企業を支援する狙いもある。

来年の政府支出は9.8%増加し、財政赤字は対国内総生産(GDP)比4.4%に拡大する見通し。財務相は、来年は外貨建て国債発行額を約35億ドルに引き上げ、財源を確保するとした。

これより先にチリ中銀が発表した10月の経済成長率は前年同月比マイナス3.4%と、10年ぶりの大幅な落ち込みとなった。

スコシアバンクはリポートで「悪いニュースの始まりだ」と警告した。

教育や輸送、ビジネスサービス、宿泊・外食などが特に軟調で、非鉱業部門の活動が4%落ち込んだ。鉱業部門は銅鉱山がおおむね平常通りの操業を続けたことなどから2%伸びた。