(ブルームバーグ): 野村ホールディングス(HD)の次期社長兼グループCEO(最高経営責任者)への昇格が決まった奥田健太郎副社長は2日夕の記者会見で、「取り巻く環境は大きく変化している。お客さまや市場のニーズを敏感に捉え変革のスピードを上げていきたい」と抱負を述べた。

奥田氏は「金融業は社会に不可欠で進化を繰り返す、一方、メインプレイヤーは今までと同じではないという危機感がある」と指摘。その上で「アライアンスをいろんなところと組んでいく。相手は既存の金融業者かどうかは分からない。柔軟に考えていく」との考えを示した。 

野村HDは同日、奥田氏の社長昇格人事を発表した。就任は2020年4月1日付。永井浩二社長は取締役会長に就く。

会見に同席した永井社長は、過去の負の遺産(レガシー)の清算だけでなく、ビジネスプラットフォームの再構築も順調に進んでいるとして「一つの区切りとして、次世代に任せることにした」と交代の理由を説明。奥田氏を選んだ理由についてはリーダーシップと卓越したコミュニケーション能力を挙げた。

奥田氏(56)は1987年に慶応大学を卒業後、野村証券に入社。2010年4月にインベストメント・バンキング担当の執行役員、17年4月に野村HD執行役員米州地域ヘッドなどを経て、19年4月から副社長兼グループCo-COO(最高執行責任者)を務めている。 

永井氏は12年8月、増資インサイダー問題で経営トップが引責辞任したことを受けて就任。1985年まで7年2カ月間トップを務めた田淵節也氏の在任期間を超える長期政権となっており、約8年ぶりのトップ交代となる。 

野村HDのトップ交代について、モーニングスターのアナリスト、マイケル・マクダッド氏は「継続性のサインだと受け止めている」と述べた。S&Pグローバル・レーティングの主席アナリスト、松尾俊宏氏は野村HDがホールセール部門の収益を3億~4億ドル拡大させるなどの目標を打ち出していることについて、新執行部が「どのような策を打ってくるのか注目している」と語った。

野村HDは前期(2019年3月期)、海外企業の「のれん」巨額減損などで1004億円の純損失と10年ぶりの赤字に転落。5月28日には東京証券取引所の株式市場再編に関する情報を不適切な方法で漏えいしたとして、金融庁から業務改善命令を受けた。永井氏は月額報酬の3割を3カ月間返上することを決めたものの、引責辞任する考えはないと述べていた。

ただ、6月の株主総会では米議決権行使助言会社が永井氏の取締役再任に反対を推奨するなどした結果、取締役選任に対する同氏の株主からの賛成比率は61.7%と昨年の総会の96%から急落していた。 

永井氏は会見で、今回のトップ交代について情報漏えいの不祥事や株主総会での賛成比率の低下などは直接的な影響はなかったと述べた。

--取材協力:浦中大我.

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