[ロンドン 22日 ロイター] - ユーロ圏の新たな指標金利であるESTR(ユーロ短期金利)が今週急上昇したのは、フランスの銀行が緊急時対策テストの一環で短期資金を調達したことが背景にあると、2人の関係筋が22日語った。

ESTR<EUROSTR=>は20日、前日から約3ベーシスポイント(bp)上昇しマイナス0.511%となった。21日にはマイナス0.542%まで戻った。市場は欧州中央銀行(ECB) のオーバーナイト金利がESTRにどのように反応するかを見定めており、今週の金利上昇は注目を浴びた。

関係筋によると、1行以上の仏銀が緊急時対策テストを実施した際に短期金融市場で資金を調達したため、予期せぬ金利上昇圧力がかかったという。

ECBは10月にESTRの公表を開始した。それまでのEONIA(ユーロ圏無担保翌日物平均金利)に代わる指標で、市場のゆがみを是正する上で20年前にユーロを導入した時以来の大幅な改革だ。

TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、プージャ・クムラ氏は「ESTRの上昇を不安視していない。昔の指標金利もこの時期に上昇したことはある」と指摘した。「ただ新たに導入されたばかりなので市場が注目しているほか、ECBが金利安定を心がけているだろう」と付け加えた。

ECBはESTRの日々の変化についてコメントしないとしている。

あるトレーダーは、金融機関が新たに導入された金利階層化を活用しているため、市場の流動性が低下したことがESTR上昇につながった可能性があると指摘。階層化構造の下、銀行がECBに預ける一部の準備金は、中銀預金金利のマイナス0.5%ではなく0%の金利が適用される。同トレーダーは「階層化を背景に、銀行がテストを実施する際に流動性が低下した」としながらも、「影響がずっと残るものではないと思う」とも述べた。

一方、コメルツ銀行のアナリストは慎重な見方を示した。投資家向けのメモで「ESTRが急騰して過去最高水準を付けたことは、階層化の下での金利設定の安定性に懸念をもたらした。階層化がうまくいかなかった場合、ECBが利下げする余地が限られていしまうため、より広範な影響があるかもしれない」とした。