[ワシントン 19日 ロイター] - 通商法の専門家によると、トランプ米大統領は通商拡大法232条に基づき、外国製の自動車と自動車部品に追加関税を課すかどうかの判断を14日の期限までに示さなかったため、同条に基づく関税の発動はもはやできない見通しだ。

トランプ政権は通商拡大法232条に基づき、国家安全保障上の観点から自動車と自動車部品に最大25%の追加関税を課すかどうかを14日までに判断することになっていたが、大統領は何も行動を起こさず、自動車メーカーは困惑している。

自動車関税はトランプ政権の通商政策の重要部分であり、トランプ大統領は各国との交渉を優位に進めるための強力なツールとして自動車関税の発動をちらつかせてきた。

だが、9月に日本と合意した貿易協定には自動車は含まれず、協議継続となった。また、欧州連合(EU)との通商協議は協議の範囲を巡る対立が解消されず、正式に開始されていない。[nL3N26H3UV][nL3N26G4LS]

1962年制定の通商拡大法は大統領が国家安全保障上の観点から関税を発動する際の期限を明確に示している。

世界貿易機関(WTO)の元判事で現在はジョージタウン大学の法学教授のジェニファー・ヒルマン氏は「私見では、通商拡大法は輸入に対して行動を起こすか、何もしないと決定する以外に大統領に選択肢を与えていない。本件は終了した」と述べた。

別の専門家は、期限までに232条に基づく関税を発動しなかったことで、トランプ大統領は同条に基づく関税の発動権限を喪失したと指摘した。

また、米国際貿易委員会(ITC)が先週、トランプ政権が2018年8月に232条に基づいてトルコ製鉄鋼への関税を倍の50%に引き上げようとした件で、調査から発動までに時間がかかりすぎ、時間切れとした判断したことも、専門家の見方を後押ししている。

一方、トランプ政権が輸入車に関税を課すには、他の手段もあるという。先のヒルマン氏は、大統領が制裁発動やテロリストの資金調達阻止に広く使われる国際緊急経済権限法(IEEPA)を自動車関税に活用する可能性を挙げた。

トランプ政権の232条を巡る判断が時間切れとなったかどうかコメントを求められたホワイトハウス当局者は、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が「自動車や自動車部品の輸入に伴う安全保障上の懸念に関する通商協議の進捗について大統領に報告した」と述べた。