[東京 8日 ロイター] - フィデリティ投信の運用本部長、丸山隆志氏はロイターとのインタビューで、秋以降に出遅れ修正が進んだ日経平均株価<.N225>について、来年には2万5000円を目指す局面もあるとして、世界株式の中でも日本株のオーバーウエート(強気)を維持する意向を示した。

──出遅れ感のあった日本株だが、9月・10月のラリーを経て、日経平均も足元では1年超ぶり水準となる2万3000円を回復している。その原動力は。

「1つ目が業績の底打ちだ。半導体から始まって、次に電子部品で顕著となり、ようやくファクトリーオートメーション(FA)関連でも確認できてきた。それを受けて、株価も良い反応が出ている」

「2つ目は世界的な金融緩和。インド、インドネシア、ロシアなど、新興国での利下げラッシュが奏功している」

「3つ目が、言わずもがなの米中貿易問題の緩和だ。インパクトとしては3が大きいが、当社は1と2を重視している。さらに、グローバルの製造業PMI(購買担当者景気指数)の一部に回復の兆しがあることも、原動力となっている」

──現在進行中の国内企業の中間決算をどうみるか。

「全体としては、予想通り製造業セクターの下方修正が多く出ている。ただ実績が下方修正されていても、今後はこれ以上悪くならない、前年対比でみた場合に最悪期は通り過ぎて回復基調に入っているという点をみて、株価は先んじて上がってきている」

「好例は(FA向け部品メーカーの)ミスミグループ<9962.T>。10月28日の決算発表では会社側は通期の予想を下方修正したが、下期に関しては前年同期比でほぼ横ばいだった。それに対して、株価はポジティブに反応(決算後7営業日で約10%上昇)した」

──世界株式の中で、日本株の投資判断は。

「株式自体にはニュートラル(中立)。地域別では、ネグレクトされて出遅れ感の強かった日本を以前からオーバーウエートしていた。今もグローバルの比較感で相対的な魅力は維持されている」

「欧州も、それなりにオーバーウエートしている」

──2020年の日本株と為替の見通しは。

「日経平均は、コアレンジとしては2万1500─2万4500円での推移を予想している。PER(株価収益率)で12─14倍というイメージだ」

「今は13倍くらいで、それなりにいい所まで来ている。2016年のトランプラリーの時はPER15倍まで行った。それをみにいく可能性はある。一時的に2万5000円をつけるということはあるだろう」

「ただ、その水準で定着するとか、さらに上に行くというシナリオは描きにくい。投資戦略としては、その局面では利益確定に動くことになると思う」

「為替については特に強いビューは持っていないが、ドル円<JPY=>は現行レンジに近い105─115円での推移を予想する」

──セクター別の投資判断は。

「上値余地があるか注意深くみないといけない銘柄が増えている。世の中の成長が低い中で、一部の良い銘柄に資金が集中している」

「例えば、半導体関連の一角は相当株価が上がった結果、スーパーサイクルが語られていたころの水準まで来ている銘柄もある。期待が極めて高いものについては、利食った方が良い銘柄もある」

「来年に向けた大きなテーマだが、悩ましいのがバリュー(割安)株の扱いだ。半導体など、一部で利益確定した資金のバリュー株への振り向けについては、社内でもまだ議論が割れている」

「グローバルの成長は強くない。減速してきたが、新興国の利下げなどもあり安定化しそうな兆しがある。それが安定して終われば、つまりスローな成長であれば、グロース(成長)株が引き続き有利で、グロース主体の戦略で問題がない」

「しかし、安定した後にもう一段景況感が良くなると、裾野が広がって、出遅れている一部のバリュー株、自動車などが買われる。金融はまだこの段階では買われない」

「社内ではまだ議論があるが、自動車については足元、特定銘柄に選別的に買いを入れている。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など自動車に求められるものが変わり自社だけで対応できなくなる中、他の業種を含めてテクノロジーを俊敏に取り込めるアライアンスをしている会社が勝ち組の条件だ」

「その後もし財政政策を動員するとなり、米長期金利が2%台に上がった場合には、日米欧でほぼ同時に金融株を含むバリュー株が上がるだろう。16年にも米大統領選をきっかけに長期金利が1.6─1.7%から2.5─2.6%に急伸し、そこから6か月ほどバリュー相場が続いた」

*一部文章を修正して再送します。

(インタビュアー:植竹知子、佐野日出之 編集:田中志保)