[ワシントン 31日 ロイター] - トランプ米政権は、中東レバノン向けの1億0500万ドルの安全保障支援を保留にしている。米政府当局者2人が31日に明らかにした。

政治腐敗に抗議する大規模な反政府デモが続くレバノンでは、ハリリ首相が29日、辞任を表明した。

匿名を条件に政府当局者2人がロイターに明らかにしたところによると、国務省は31日に議会に対して、ホワイトハウスの予算局と国家安全保障会議(NSC)がレバノン軍事支援の凍結を決定したことを伝えた。

2人の当局者は支援凍結の理由は明らかにしていない。当局者の1人によると、国務省はこの決定の理由を議会に説明していない。

国務省はコメントを差し控えている。

米政府は、中東における米国の重要なパートナーであるレバノンが国境を守ることが極めて重要だと認識し、5月から支援の議会承認を求めていた。

一方で米国は、イランの支援を受け、米国がテロ組織として指定しているシーア派武装組織ヒズボラがレバノン政権で影響力を拡大していることに対して、繰り返し懸念を示している。

ハリリ首相の辞任表明を受けてポンペオ国務長官は、レバノンの政治指導者らに対し、国民のニーズに応える新政府の樹立を支援するよう訴えると共に、汚職問題の解決を求めた。

ある米政府当局者はロイターの取材に対して、レバノンの治安を維持するための支援は必要だと確信していると述べ、レバノン政権内が不安定な状況となっているだけでなく、中東全体の情勢が揺らぐなか、シリア内戦で数千人の難民を受け入れているレバノンの状況を支援が必要な理由として挙げた。

この当局者は、特に重要なのはレバノン軍の強化だと指摘。米国の支援を受けているという主な理由でレバノン軍は現在、国内で最も有能な機関の1つとみられていると説明した。

その上で、米国がレバノンへの支援を打ち切れば、代わりにロシアが影響力を拡大すると警戒感を示した。

米国がシリア撤退を進めるなか、シリア情勢は、アサド政権の後ろ盾であるロシアが主導する構図が鮮明となっている。