[ワシントン 23日 ロイター] - 米議会民主党は、トランプ大統領の弾劾調査の年内終了をめざし、職権乱用と議会調査妨害の両面に照準を定めて弾劾訴追案の準備を進めている。議員や議会筋などが明らかにした。

民主党議員の一部は、米政府の現旧当局者のこれまでの証言によって、トランプ氏を訴追するために十分な証拠が既に集まったと主張する。一方、党内には、世論が二極化している現状を踏まえ、国民の賛同を得るためにもさらなる情報を集めるなど、より慎重で周到な対応を求める声もある。

<「タイムリーな行動が必要」>

弾劾調査は、トランプ大統領がウクライナ政府に対し、2020年米大統領選で対立候補になる可能性が高いバイデン前副大統領の調査を求めたとの内部告発をきっかけに始まった。

歴代大統領で下院による弾劾訴追を受けたのは2人だけで、両者ともに上院の裁判では有罪を宣告されず、罷免を免れている。

下院の情報特別、司法両委員会のメンバーである民主党のバル・デミングズ議員はロイターに対し、トランプ氏の弾劾調査は12月までに終了できるだろうと予想。「徹底的で入念であるべきだが、タイムリーに行動する必要もある」と指摘した。

民主党の議会筋3人によると、党内には、一連の公聴会を終わらせた上で、11月28日の感謝祭祝日までに「弾劾条項」と呼ばれる訴追の採決を目指す案が浮上しているが、23日時点で実現する可能性は極めて低そうだという。

弾劾調査を進める下院民主党はまだ、多数の関係者を聴取する必要があるという。

下院の情報特別、監視両委員会の委員であるラジャ・クリシュナムルティ民主党議員は「形式的な期限のために近道を選ぶべきではない」と強調。「それでもなお、われわれはかなり迅速に取り組んでいる。調査開始からまだ4週目だが、既に多くの情報を集めた」と自賛した。

下院の多数派を占める民主党は、共和党が支配する上院での弾劾裁判を優位に進めるほか、世論を味方につけるため、最善の準備が必要との立場を示している。

<長引く調査に懸念、つなぎ予算の期限迫る>

ロイター/イプソスの最新の世論調査によると、無党派層の45%がトランプ氏は弾劾されるべきと回答。一方で、同じく無党派層の54%は議会はトランプ氏の調査よりも「米国民が直面する重要な問題の解決に専心すべき」と回答しており、多くの人は長期間の調査に政治的エネルギーが振り向けられる状況を望んでいないようだ。

取材に応じた複数の議員は、これまで集められた証拠はトランプ氏を職権乱用と議会調査妨害で訴追する際の裏付けになるとの見方を示した。トランプ氏は政府高官が証言台に立つことを阻止し、請求された資料の提出を拒んできた。

下院民主党が弾劾訴追の最善のタイミングを見極めようとするなか、11月21日には現行のつなぎ予算が期限を迎え、新たな予算措置が必要になる。

民主党の議会筋は「12月より前に弾劾訴追の採決を行った場合、トランプ氏が予算法案への署名を拒否し、政府閉鎖を招く可能性を懸念している」と述べた。