[東京 21日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は20日、エマージング・マーケッツ・フォーラムで講演し、世界経済に先行きについて、新興国のパフォーマンスが鍵を握っているとの認識を示し、そのために金融包摂の推進と持続的な成長の実現、将来的な高齢化への対応が重要と指摘した。

黒田総裁は「新興国の持続的発展に向けて」と題した講演で、家計や企業が適切な金融サービスにアクセスを有し、効果的に利用できる状況を指す金融包摂を推進すれば、貧困や格差の解決に資するだけでなく経済成長にもつながると説明。「金融・財政政策の実効性を高める効果も期待できる」と語った。

そのために、インターネットや携帯電話などの情報通信インフラを整備するとともに、フィンテックの活用も有効との認識を示したが、同時に「金融分野におけるデジタル技術の広範な活用が、金融システムの安定性や金融政策の有効性に与える影響については十分な検討が必要」とも付け加えた。

黒田総裁は新興国の持続的な成長の実現に向けて、格差の解消など社会問題の解決や環境問題への取り組みの重要性を指摘した上で、市場メカニズムや経済的なインセンティブの積極的な活用を訴えた。

高齢化への対応では、年金制度と財政について言及。「財政運営にあたって、中長期的な財政の持続性を維持し、財政に対する信認を確保することが重要」と述べ、そのためには人口動態の変化に対応した社会保障制度や税制の設計・見直しが不可欠との認識を示した。マクロ的な観点からは、労働参加の拡大と生産性の向上も必要と指摘した。

(志田義寧)