[ワシントン 20日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は20日、金融緩和と柔軟な財政政策、長期的な潜在成長力の押し上げに向けた構造改革という政策ミックスが、景気刺激に有効となる可能性があるとの見解を示した。

総裁は20日に開催された有識者会議(G30)のセミナーで、先進国中銀には成長押し上げのための政策手段が十分にあると指摘した。その一方、財政支出や経済の潜在成長力を押し上げる構造改革が、金融緩和の効果を高めるとの見方も示した。

黒田総裁は「われわれは非伝統的な政策手段を備えている。したがって金融政策の有効性について、過度に悲観的になる必要はない」と述べた。

その上で、成長への著しい下押し圧力に対応するため、金融緩和、柔軟な財政政策、中立金利の上昇につながる措置という政策ミックスが、有効となる可能性があると述べた。

日銀は2%の物価目標達成に向けて緩和策を維持しつつ、金融緩和の長期化がもたらすコスト引き下げに向け、必要な措置をとるとも指摘。「金融システムの安定性は、一義的にマクロプルーデンス措置を通じて対応する必要がある。ただ、完全なプルーデンスツールはない」とし、「金融政策は金融活動の広範な分野に影響を及ぼす。日銀は金融緩和によるコストを低下させるため、金融機能を検証し、適切な政策対応を行う必要がある」と述べた。

黒田総裁はまた、超長期金利の過度な低下でイールドカーブがフラット化し、年金基金や保険会社の投資リターンが圧迫される中、「イールドカーブの形状に注意を払う必要がある」と述べた。

日本は超低金利によって金融機関の利益が損なわれ、貸し渋りが起きる状況には、まだ至っていないとした上で、金融緩和の長期化によるそうした悪影響は蓄積するため、注視する必要があると指摘。

「現時点では深刻な問題ではない。しかし、5年後もしくは10年後には深刻な問題となる可能性もある」とし、日銀は追加金融緩和を行う場合、副作用を軽減する措置も合わせて実施する可能性が高いと述べた。

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