[マドリード/ザ・ウッドランズ(米テキサス州)/ニューヨーク 3日 ロイター] - 米製造業の減速が他部門にも波及する兆しが出る中、米連邦準備理事会(FRB)当局者2人は3日、必要なら追加利下げを行うことに異論はないとの立場を示した。一方、クラリダ副議長は今後の政策措置について明確な言及を避けた。

米供給管理協会(ISM)がこの日発表した9月の非製造業総合指数(NMI)は52.6と、2016年8月以来の低水準となった。

1日に発表された9月のISM製造業景気指数も、景気拡大・縮小の節目となる50を2カ月連続で下回り、09年6月以来の低水準を記録した。

シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は訪問先のマドリードで3日、ISM非製造業指数発表に先立ち、「次回の連邦公開市場委員会(FOMC)では何が適切になるのか討議される。調整を行うことが適切なら、これにまったく異論はない」と述べ、米経済成長に対する下押しリスクの一つとして、最近の米製造業の落ち込みを挙げた。

ダラス地区連銀のカプラン総裁は統計発表後、単月の経済指標に過度に反応すべきではないとしながら、消費や労働市場にも弱さが波及するか「極めて慎重に」見守っているとし、「必要に応じて」一段の措置を講じることに異論はないとの立場を示した。

カプラン総裁は記者団に対し「世界的な経済成長や製造業、企業投資の弱さが経済の他の部分に波及するまで待ち、脆弱性が顕在化するのを見極めた場合、待ち過ぎとなる可能性がある」と指摘。

FRBが7月と9月に決定した利下げで急激な景気減速の可能性は低下したとしながらも、可能性が完全になくなったわけではないとし、「必要ならフェデラル・ファンド(FF)金利(の誘導目標)をさらに調整することは厭わない」と述べた。

さらに、過剰な借り入れやリスクテークを引き起こすことは避けたいとしながら、FF金利の調整が必要となれば、早期に実施したほうが好ましいとの考えを示した。

その後、クラリダ副議長はニューヨークでウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催の討論会に出席し、「低失業率と底堅い成長、安定したインフレを維持するため適切に行動する」と述べた。

米経済成長や消費は「良好」で、労働市場は「非常に健全」だとの認識を示した。同時に、世界経済の減速や貿易を巡る不透明感、海外の根強い低インフレを米経済へのリスクとして挙げた。

その上で、「(政策)会合は年8回開かれ、われわれは1回ごとに臨む。既定路線には乗っていない」と述べ、金融政策を慎重に見極める姿勢を示した。

<利下げ確率約90%>

米中貿易摩擦や、英国の欧州連合(EU)離脱といった政治リスク、ドイツなどの景気減速が米企業に悪影響をもたらす中、FRBは今年、2回の利下げを実施した。

個人消費や雇用の伸びは今のところ底堅さを維持しているが、FRB当局者は、貿易を巡る不透明感や世界経済の減速が米輸出・製造業部門以外にも波及する兆しが出るか注視する考えを示してきた。

CMEグループのフェドウオッチによると、ISM非製造業指数発表を受け、金利先物市場が織り込む10月29─30日のFOMCでの25ベーシスポイント(bp)の利下げ確率は一時90%超に上昇。直近では88%となっている。年内さらに1回の利下げが実施される確率も50%以上織り込まれている。

3日の米国株式市場は利下げ期待の高まりを背景に上昇した。

貿易を巡る不透明感が米経済に広く影響しているかどうか見極める上で、4日に発表される9月の雇用統計が極めて重要となる可能性がある。