[シドニー 1日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は1日、今年3回目となる利下げを決定したが、低金利が銀行収益に及ぼす影響を巡る懸念が高まる中、国内大手4行のうち2行が今回の利下げを住宅ローン金利などに完全に反映させることを拒否する姿勢を示した。

オーストラリア中銀は政策金利のオフィシャルキャッシュレートを1.00%から0.75%に引き下げることを決定。景気を支援し失業率の低下を促すことが狙いで、必要に応じて金融政策をさらに緩和する方針を示した。

フライデンバーグ財務相はこれを受け、シドニーで記者団に対し「今回の25ベーシスポイント(bp)の利下げを銀行が完全に反映させると政府は期待している」と述べ、銀行に対し利下げを住宅ローン金利に反映させるよう呼び掛けた。

ただ最大手のコモンウェルス銀行(CBA)<CBA.AX>と3位のナショナル・オーストラリア銀行(NAB)<NAB.AX>はこれを拒否する姿勢を表明。CBAは金利がゼロ%に近づく中「困難な綱渡りを強いられている」とし、超低金利政策の効用に疑問を呈した。NBAの個人向け銀行部門担当最高顧客責任者(CCO)、マイク・ベアード氏は、金利が歴史的な低水準にある中、預金業務を巡るコストが圧迫要因になっていると述べた。

中銀は8月に金利を据え置いたが、6月と7月に利下げを実施。度重なる利下げで国内行の純金利マージン(NIM)が圧迫される中、アナリストは中銀が一段の利下げを実施すれば銀行の負担は増大すると警告していた。

エバンズ・アンド・パートナーズのシニア銀行アナリスト、マシュー・ウィルソン氏は「超低金利環境の長期化は、銀行のNIMの重しとなり、収益の圧迫要因となる」と指摘。オーストラリアでは国内大手4行が住宅ローン、および預金の約80%を握っているが、ウィルソン氏の試算によると、中銀が金利をゼロ%まで引き下げた場合、大手4行の純金利収入は約84億豪ドル(56億6000万米ドル)目減りする。

CBAとNABに加え、ウエストパック銀行<WBC.AX>とオーストラリア・アンド・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ)<ANZ.AX>は6月と7月の利下げの影響を完全に顧客に転嫁することに抵抗を表明。ウエストパックとANZはこれまでのところ今回の利下げに対する反応は示していない。