[東京 26日 ロイター] - 日米両首脳は25日、 米ニューヨークで会談し、貿易協定の合意文書に署名した。日本は環太平洋連携協定(TPP)の水準で農産物市場を開放する一方、米国にとって対日貿易赤字の最大の要因である自動車については協議が持ち越されることになった。

市場関係者の見方は以下の通り。

<三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト 市川 雅浩氏>

日米貿易協定は最終合意に至ったものの、自動車や関連部品の関税撤廃については事実上の先送りとなった。関税撤廃に向けた具体的なスケジュールは明記されておらず、踏み込んだ話には至らなかった印象がある。しかし、もともとマーケットは自動車や関連部品の関税撤廃に対して強い警戒感は持っていない。むしろ、警戒していた為替条項導入は回避できた。とりあえず許容できる結果となったのではないか。

自動車や関連部品の関税撤廃は先送りとなったものの、今後日本に対して米国が強硬姿勢を取ることは考え難い。今回の農産品関税の引き下げは米国にとって十分な結果となったのではないか。また、トランプ政権は来年の大統領選に向けて実績を上げることに必死で、対日よりも対中交渉に力を入れたいのが本音だ。日本に対して今以上に強く求める必要は、現時点ではない。

自動車、自動車関連部品銘柄の株価は今のところ堅調。為替の円安基調による影響も大きいが、今回の日米貿易協定によって市場全体に安心感が出てきたことも事実だ。今回の合意は、マーケット的には許容できる結果だった。

<シティグループ証券 チーフエコノミスト 村嶋帰一氏>

日米双方にとって悪くないディールだったのではないか。トランプ大統領は来年の大統領選に向けて農業票が欲しかったのであろうし、日本は何としても避けたい自動車の追加関税と数量規制を回避できた。

トランプ大統領が、日米の貿易不均衡に基づき、「日米貿易協定が誠実に履行されていない」と判断し、日本の自動車に追加関税や数量規制を導入する可能性はゼロではないだろうが、こうした協定がある以上、通常の状況下では想定しにくい。少なくとも、トランプ政権が2期目を迎えるまでは、そうした心配はなくなったとみていいだろう。

今回の協定には、日米どちらかが通告すれば、協定が4カ月後に効力を失うという規定が設けられた。このため、米国が日本製自動車に対する追加関税や数量規制を導入する場合、理論上は、日本の協定の停止を通告することができる。

当面はトランプ大統領が為替条項カードなどを使って日本に圧力をかけてくるリスクも後退したと言えよう。日銀が追加緩和を決めても、米国から円安誘導だと指摘されるリスクが後退したという意味では、追加緩和をしやすくなった。ただ、基本的には海外景気や為替、消費増税後の物価などをみて、日銀は判断することになるとみている。