[東京 26日 ロイター] - 安倍晋三首相とトランプ米大統領は25日(日本時間26日)、米ニューヨークで行った会談で貿易協定の締結で合意し、合意文書に署名した。日本は環太平洋連携協定(TPP)の水準で農産物市場を開放する一方、米国にとって対日貿易赤字の最大の要因である自動車については協議が持ち越されることになった。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、日本側が協議継続を希望しているため協定に自動車は含まれないと説明。自動車に関する交渉について来年4月にも開始が期待されると述べた。

<来年4月にも協議再開か>

自動車が継続協議となったため、今回の合意に関して米国側は「部分的」や「最初の」合意と表現。一方、日本側は安倍首相が今回の合意で最終合意に達したと強調した。

今回、自動車・自動車部品については、個別品目の関税撤廃・削減の方法やスケジュールを定めた米国譲許表で「さらなる交渉による関税撤廃」を明記した。茂木敏充外相は「具体的な撤廃時期は今後の交渉の中で決まっていく」と述べ、「自動車は電動化など大変革期にあり、どのような部品が重要か見極め、協議するのが大切」と指摘した。

日本車に対する関税が今後も焦点となっていくが、今回の共同声明には「協定が誠実に履行されている間、協定や共同声明の精神に反する行動を取らない」との文言が盛り込まれた。

昨年9月の共同文書では、交渉期間中は追加関税が課されないことが確認済みで、日本側は今回、交渉期間だけでなく貿易協定の効力がある間は追加関税が課されないとの確約を望んでいた。

新たな共同声明の解釈を巡り、茂木外相は会見で、「協定に反するような対応がなければ誠実に履行されていると考えるが、その間は追加関税が課されることはないことを首脳会談で安倍首相がトランプ大統領に確認している」と説明。安倍首相も記者会見で、共同声明の内容が「追加関税を課さない趣旨であることは私からトランプ大統領に明確に確認をし、大統領もそれを認めた」と強調した。

日本側は、米通商拡大法232条に基づく安全保障上の観点で日本車に関税を発動しないという確約を求めていた。ライトハイザーUSTR代表は、同232条に基づく日本への関税発動は米国の意図するところではなく、両国とも誠意を持って問題に取り組んでいくと述べた。

<米産牛肉などTPPと同等の関税削減>

トランプ大統領によると、日本は70億ドル相当の米農産物について市場を開放し、米産牛肉や豚肉、小麦、チーズ、トウモロコシ、ワインなどへの関税が大幅に引き下げられるか、撤廃される。USTRによると、日本に輸出される米農産品の約90%が免税か優遇措置の対象になるという。

日本政府の資料によると、牛肉、豚肉、小麦、乳製品、ワインについてはTPPと同等の関税撤廃もしくは削減が実施される見込み。一方、コメについては無関税枠をゼロとした。脱脂粉乳やバターなど乳製品の輸入枠も設けられない。

牛肉は、米国からの輸入量が急増した場合にセーフガードを発動する基準数量を、2020年で24万2000トンとすることで合意した。TPP参加国では発動基準は60万トンとなっており、低価格の輸入牛肉が急増しないよう、日本はTPP参加国とセーフガード基準数量を再協議する意向だ。

その他、デジタル分野ではソフトのダウンロードへの課税などが禁止される。また政府がデジタルサービス事業者に対しソースコードの開示などを求めることが禁じられる。安倍首相は「日米がデジタル分野における世界的なルール作りを主導する上で重要な決定」と指摘した。

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