[ワシントン/ニューヨーク 20日 ロイター] - 米ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は20日、不確実性に対応するために利下げを行うことには代償が伴うとし、米経済には刺激策は必要ないとの考えを改めて示した。

連邦準備理事会(FRB)は17─18日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp)の利下げを7対3で決定したが、ローゼングレン総裁は利下げに反対した。

この日に発表した利下げに反対した理由を説明する声明で、「労働市場がすでに引き締まった状態にあり、リスク資産の価格が一段と上昇し、家計と企業の過度なレバレッジを助長させるリスクがある時は、追加的な金融刺激策の必要はない」と述べた。

その上で「通商問題と地政学を巡る懸念に起因するリスクが存在していることは明白だが、不確実性に対応するために利下げを行うことには代償が伴う」とした。

今回の利下げは7月の25bpの利下げに続き、今年2回目。パウエルFRB議長は利下げは景気拡大の維持に向けた「サイクル半ばにおける調整」と位置付けている。今回のFOMCではローゼングレン総裁とともにカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁が利下げに反対。一方、セントルイス地区連銀のブラード総裁は50bpの利下げを主張した。

ローゼングレン総裁はその後にニューヨークで行った講演で、低金利で企業や個人による「過度なリスク」選好が助長される恐れがあると指摘。米経済は対中貿易戦争に起因するリスクに十分に耐えられるほど力強いとの考えを示した。

同総裁は、失業率が低水準にあることは米経済は健全であることを示しているとし、インフレ率がFRBの目標を下回っていることは「一時的な」現象に過ぎないと指摘。金利が一段と低下すれば企業や個人の過度な借り入れが助長され、経済の不安定性が増す恐れがあると懸念していると述べた。

その上で、米国の前回のリセッションでは債務水準が高かったことで状況が一段と悪化したとし、「レバレッジ水準が高いこと自体でリセッションが引き起こされることはないが、リセッションの度合いが悪化する要因になる」と述べた。

米中貿易戦争が経済に対するリスクになるとの認識を表明したものの、米国の実質経済成長率は2%となることが引き続き示されていると指摘。「リスクは懸念要因ではあるが、成長率は持続可能な水準を保っている」とし、「これまでのところ、通商問題や海外の成長減速から受ける影響に米経済は耐えているようにみえる」と述べた。