[パナジ(インド) 20日 ロイター] - インド政府は20日、景気浮揚に向けた民間投資促進策として、205億ドル規模の法人税減税を発表した。

シタラマン財務相は記者会見で、法人実効税率を30%から約25%に引き下げると発表。これにより税率は他のアジア諸国並みになると説明した。このほか国内企業向けの最低代替税も廃止する。

2019/20年度から、国内企業は、一切の控除を利用しないことを条件に所得税税率を22%とする選択肢を有する。所得税が22%だった場合、その他の税を合わせて実効税率は25%程度になるという。

また、10月1日以降に法人格を取得した企業は、2023年3月までに生産を開始するという条件で、実効税率を17%に下げる。

インドに子会社を置いていたり、インド企業と合弁している外国企業に対しても、法人税率を下げる。

<インド中銀総裁「思い切った措置」>

インド準備銀行(中央銀行)のダス総裁は、今回の措置は経済にとって「極めて有益」で「歓迎すべき、非常に思い切った措置」と評価し、これで税率がアジア諸国並みとなると指摘した。

発表を受けて、インド株式市場は5%以上上昇している。

コタク・マヒンドラ銀行のウダイ・コタク最高経営責任者(CEO)は、25%への法人減税について「ビッグ・バン改革。政府が成長を回復させる決意で、合理的な税制度を順守する企業を支援するというシグナルだ。大胆な前進だ」とツイートした。

<財政悪化懸念>

今回の減税により、税収は1兆4500億ルピー(205億ドル)減少する見込み。すでに低迷している税収がさらに減少することになり、19/20年の財政赤字目標である国内総生産(GDP)比3.3%の達成が不透明になってきた。

株式市場は、減税を好感して上昇しているが、債券市場は、赤字目標未達懸念から利回りがほぼ3カ月ぶりの高水準をつけた。

財務相の発表を受けて、10年債利回りは6.57%から6.84%に上昇している。

ミラエ・アセット・グローバル・インベストメンツの債券部門責任者、マヘンドラ・ジャドゥー氏は「1兆4500億ルピーもの税収減という現実。その一方で、景気回復により、減少分を取り返せるという期待もある」と指摘した。

5月にモディ首相の続投が決定し、経済と雇用の回復に向けた大胆な改革が期待されている。

一部アナリストは、今回の措置の個人消費押し上げ効果に懐疑的だ。

L&Tフィナンシャル・サービシズのチーフエコノミスト、ルパ・レゲ・ニツレ氏は「個人消費が失速している時に、どこまで税率を下げれば企業が設備投資を増やすか、わからない」と述べた。

現在、自動車や建設といった主要産業は、需要低迷で投資を控えている。

ワシントンの米企業公共政策研究所のレジデントフェロー、サダナンド・デューム氏は「財界に対し、モディ政権は企業の利益に敵対的でないと保証する重要な動きだ。しかし、投資環境を回復するには不十分かもしれない」と述べた。