[東京 19日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は19日、金融政策決定会合後の記者会見で「金融緩和について前回よりも前向きになっているかと言われれば、その通りだ」と述べ、追加緩和に向けた姿勢をさらに一歩進めた。その理由として「海外経済減速の動きが続いて、下振れリスクが高まりつつある」ことを挙げた。

日銀は金融政策決定会合の声明文で「海外経済の減速が続き、その下振れリスクが高まりつつある」と懸念を表明。「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれるおそれに「より注意が必要な情勢になりつつある」と先行きに対する警戒感を一段と高めた。

<下振れリスク高まっている>

黒田総裁は海外経済について「減速が続いており、まだ回復の兆しが見えてこない。この影響が輸出や生産に現れている」と指摘。「現時点では内需は比較的堅調に推移しているので、先行き経済が後退し、物価目標に向けたモメンタムが失われる状況にはない」としながらも、「海外経済を中心に下振れリスクが高まっている」として「次回会合では、海外経済の状況も踏まえて、経済・物価動向を十分点検していきたい」と慎重な姿勢を示した。

追加緩和策について、日銀は、1)短期政策金利の引き下げ、2)長期金利操作目標の引き下げ、3)資産買い入れの拡大、4)マネタリーベースの拡大ペースの加速──の4つの選択肢を提示しているが、黒田総裁は次の一手について「現時点で何かを優先的に選択することはない。経済・物価・金融情勢を踏まえて最適なものを選択する」と述べるにとどめた。

選択肢の1つであるマイナス金利の深掘りに関しては、収益を圧迫される金融業界から懸念が出ている。追加緩和の副作用について黒田総裁は「具体的なコメントは差し控える」としながらも、「政策のベネフィットとコストを比較考量した上で適切な措置を考える方針に変わりはない」と強調した。

マイナス金利を深掘りした際に銀行が個人の預金金利にマイナス金利を適用する可能性については、欧州の例を引き合いに出し「個人の預金金利がマイナスになる可能性はない」と否定した。

日銀は現在、長期金利がゼロ%程度で推移するよう長期国債を買い入れているが、長期金利は9月4日にマイナス0.295%まで低下した。黒田総裁は「海外金利が下がったことを反映して日本の金利が下がったのを、全部止めなければいけないというのは変だ」とする一方で、「目標のゼロ%程度から外れる状況をいつまでも容認することはない」とも述べ、今後も適切に対応していく姿勢を示した。

イールドカーブのフラット化圧力が強まったことに関しては「超長期金利が下がりすぎると年金や生保の運用利回りが下がり、消費者マインドに影響があり得る」と述べ、「イールドカーブはもう少し立ったほうが好ましい」との認識を示した。

(志田義寧 和田崇彦)