グリーンシーズンの観光客が急増する白馬。その仕掛人は、元官僚

2019/9/20

山の上のビーチ

長野県白馬の八方尾根。麓からゴンドラに乗り、標高1400メートルに位置するうさぎ平で降りる。ここのゴンドラステーションにはカフェや食堂があり、広々としている。夏場はここからトレッキングに出る人、冬場はスキーヤーやスノーボーダーで賑わう。
ステーションの屋上に向かう。僕が取材に訪れた日は、あいにくの雨だった。それでも、階段を上り切った時、目に入った光景には胸が躍った。白を基調とした爽やかな雰囲気のスペースに、大人が数人でくつろげる広さのジャグジーと、海辺にありそうなバー。ゴンドラを改造したサウナもある。もし晴れていたら、パラソルを広げ、ビーチチェアやハンモックで寛ぐ人もいただろう。
「すごい! まさしくビーチですね」と僕が言うと、今年7月にオープンしたこの場所、「白馬マウンテンビーチ」の仕掛人、白馬観光開発の代表取締役、和田寛は苦笑した。
「晴れたら、絶景なんですけどね。まあ、山の天気は読めません」
がっちりとした体格に防水仕様のアウトドアジャケットを羽織り、傘もささず、雨を気にするそぶりも見せない和田は、見るからに山を愛し、山に生きる「山男」だ。その姿を見て、開成高校、東京大学法学部を出た官僚だったと言い当てられる人はいないだろう。
和田はほかにも、栂池高原スキー場に50種類以上の遊びを体験できる「白馬つがいけWOW!」、岩岳山頂に北アルプスを一望できるテラス「白馬マウンテンハーバー」など続々と話題の施設を開き、春から秋にかけて白馬を訪れる観光客を急増させている。具体的な成果はもう少し後に記すとして、なぜ東京生まれ、東京育ちの元官僚が、白馬の山のなかで働いているのだろうか?