[ロンドン 4日 ロイター] - 英国のジャビド財務相は4日の議会演説で、緊縮財政の時代は終わったと宣言し、過去15年で最も大幅な歳出拡大計画を打ち出した。ただ、欧州連合(EU)離脱問題の打開に向けジョンソン首相が目指す総選挙をにらんだ対応だとして野党・労働党は批判している。

ジャビド氏は議会で「労働党の大不況から10年の回復を経て、緊縮財政の時代が終わり、新たな再生の10年が始まろうとしていいる」と強調。2020/21年度のインフレ調整後の経常的歳出を4.1%増やすと表明した。

教育や医療、治安など「国民にとり優先度の高い」分野の歳出を拡大するとし、来年度はどの政府部門の予算も削減しないと強調した。

労働党の影の財務相、ジョン・マクドネル議員は『「国民にとっての優先分野」を持ち出してごまかそうとしているとは、皮肉を通り越している」と強く批判した。

ジャビド氏は、20/21年度の歳出計画に関しては、前政権の財政規律を順守する方針を示した。ただ、金利が過去最低で推移するなか、今後の借り入れ拡大に含みを持たせた。

2010年には国内総生産(GDP)比約10%に達していた英国の財政赤字は、1%を若干上回る水準にまで縮小しており、政府の借り入れ余地は拡大している。

ただ、英経済の景気後退(リセッション)入り懸念が高まり、EU離脱の先行きも見通せないなかで、歳出を大幅に拡大すれば英財政への信頼が揺らぐとアナリストは指摘している。

シンクタンクのリゾリューション・ファウンデーションは、ジャビド氏は大胆なやり方で緊縮財政時代の幕引きをしているが、景気低迷やこのところの公的債務の拡大を踏まえると、借り入れをGDP比2%未満に抑えるという財政規則を既に20/21年度に守れない可能性があると指摘した。

ジャビド氏は、年内に中長期の歳入歳出計画を発表する前に、財政規定を見直す考えを示した。