(ブルームバーグ): 香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は4日、「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回したと発表した。姿勢を転換させて長引く混乱を収拾したい考えだが、混乱緩和に役立っても終止符を打つには至らない可能性がある。

長官はこの日、香港の議員や中国立法府の香港代表など体制側の政治家との会合の後にテレビ演説し、撤回を表明した。政府の行動について独立調査を行うとも述べ、抗議参加者に対する警察の対応を検証することもあらためて約束した。一方、一部のデモ参加者に対する暴動罪での起訴取り下げなど他の要求は受け入れられないと言明した。

「過去2カ月に起きたことは香港の人々に衝撃を与え悲しませた。われわれは皆、香港のことを心配し、現在の行き詰まり状態と不安な時期を脱する方法を見つけたいと望んでいる」と長官は語った。

先週末にはデモ参加者と警察の激しい衝突があった。6月上旬以降に拘束された人の数は1100人を超えている。

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案は香港市民の反発を呼び、100万人以上が抗議デモに参加。香港は1997年の中国への返還以降で最大の危機に陥った。

林鄭長官は先に、改正案を棚上げするとし、同案は「葬られた」と述べていた。だが抗議は収まらず、かえって参加者らは民主主義的な自由の拡大など要求を増やした。

改正案の正式撤回を受けて抗議が収束するかどうかはまだ分からない。正式撤回は活動家らが掲げる5つの主要な要求の1つにすぎない。要求はほかに、警察の暴力に対する独立機関の調査や逮捕者に対する恩赦、普通選挙の実施などがある。

民主派の議員、クローディア・モー氏は長官の発表後の会見で「長官の譲歩は小さ過ぎ、遅過ぎだ。ダメージはすでに生じた。香港の傷口からはまだ血が流れている」と述べた。民主化活動家らのオンラインフォーラムで抗議行動を組織するのにも使われるLIHKGでは、「5つの要求のうち2つに応じると言う。受け入れられるか?」との書き込みに、15分未満の間に415の否定の反応があった。

撤回は市民の怒りを和らげ暴力が弱まるかもしれないが、民主化拡大および警察対応の説明責任に対する要求を鎮めるものではないと、嶺南大学のサムソン・ユエン助教授(政治学)は語った。

原題:Hong Kong’s Lam Scraps Bill That Sparked Months of Unrest(抜粋)Hong Kong’s Lam Scraps Bill That Sparked Historic Unrest

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