[函館市 4日 ロイター] - 日銀の片岡剛士審議委員は4日、函館市金融経済懇談会であいさつし、今後の金融政策運営では「短期政策金利のマイナス幅を拡大させることで、イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させるよう、長短金利操作を行うことが適当」との認識を改めて示した。

緩和のタイミングは「経済・物価が下振れるリスクが増す中で、物価目標と実際の物価上昇率に相応の距離がある現状では、経済の遅行指標である物価の変調を確認した後ではなく、先制的に政策対応することが重要」と強調した。

現在のフォワードガイダンスに示された2020年春頃までに物価目標を達成できない場合、その期間を延長する必要が生じる可能性があると指摘。そうした変更を繰り返すと金融政策への信認が低下する懸念があるとして「政策金利のフォワードガイダンスは、物価目標と関連付けたものに修正することが適当」と繰り返した。

さらに、インフレ予想のアンカー(碇)を失った状況の下で2%の物価目標を達成し安定させるためには「金融緩和の強化のみならず、財政政策との連携(ポリシーミックス)をより強化することも重要」と重ねて強調した。

<世界経済、回復タイミング後ずれ>

世界経済については「今年後半以降とされてきた回復のタイミングが後ずれし、回復の程度も小幅にとどまる可能性が高まっている」と指摘。その背景として、1)各国経済政策の不確実性の高まり、2)米中貿易摩擦の影響、3)世界半導体市場の減速──を挙げた。

日本に関しては、2021年度までの見通し期間の成長率を「ゼロ%台の半ばから後半」と予測し、「潜在成長率をやや下回り、リスクも下方に厚いと見込んでいる」と慎重な見方を示した。

設備投資についても「全体としては堅調でも、製造業においては海外経済減速の影響が着実に及んでいる」と警戒感を示している。

<物価目標実現への信認強まっていない>

片岡委員は、インフレ予想が弱めの動きを続けている背景として「過去、長期間にわたってデフレが続いたことや、足元の物価の動きが弱いことが作用しているほか、日銀が掲げる2%の『物価安定の目標』の実現に対する信認が十分に強まっていないことも影響している」と説明した。

物価の先行きについては「物価上昇率が2%に向けて伸びを高めていくとは判断できない」と改めて指摘。理由として、1)需給ギャップの拡大がインフレ率の拡大につながりにくくなっている、2)適合的期待形成を通じた予想インフレ率の上昇や、予想インフレ率の上昇を受けた物価上昇という経路が機能するには時間がかかる、3)物価見通しの下方修正が続く中で政策が現状維持とされる下では、物価目標に対する信認強化を通して予想インフレ率がフォワードルッキングに高まるとは見通しにくい、4)各国の中央銀行が金融緩和姿勢を強める中で、為替相場などを通じて日本の物価に対する逆風が強まるリスクが高まっている──ことを挙げた。

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(志田義寧 編集:田中志保)