[ロンドン 30日 ロイター] - 英議会は夏休みを終えて9月3日に再開し、議員らはジョンソン首相が欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」に向かうのを阻止する計画に着手する。

しかし10月31日の離脱期日までに残された審議日数は限られる。阻止のために取れる選択肢をまとめた。

◎法律改定

英国法で、英国は10月31日にEUを離脱すると定められている。この期日を変更できるのは時の政府だけだ。

つまり議会は、ジョンソン首相がEUに離脱延期を要請することを義務付ける法律を可決する必要がある。またEUが延長に合意した場合には、国内法を変更する必要がある。

極端な場合には、法律改定を利用してジョンソン氏に離脱撤回を強いることさえ可能だ。

しかし政府の意向に反する法律を可決するのは容易ではない。審議する議題の決定権は閣僚らがほぼ完全に掌握しているからだ。

法律改定には3つのハードルを越える必要がある。(1)議題をハイジャックする手段を見つける(2)下院通過に十分な票を取り付ける(3)下院を通過した場合、上院で一連の採決に勝つ──の3つだ。

それぞれの段階にリスクがつきまとう。

議題を掌握するにはバーコウ下院議長の助けが必要になる。議長は過去に合意なき離脱阻止を支持してきた。野党労働党は9月初週の臨時審議を利用して議題掌握を図りたい考えだが、この手法は試されたことがない。

定数650の下院で法案を通過させるには、与党保守党内で造反議員が出る必要がある。

親EU派が多数を占める上院でも、EU懐疑派の保守党議員が議事妨害を試みた場合には障害となる可能性がある。

何より、それぞれの手続きには議会審議の時間が費やされる。ジョンソン首相は28日、9月半ばから10月半ばまで1カ月以上も議会を閉鎖すると発表し、審議日数は短くなっている。

ただ、前述のような手法はことし一度成功している。議会はメイ前首相に離脱延期を要求する法律を可決した。メイ氏は結局、この法律とは無関係に離脱延期を決定したため、法律の有効性は完全に試されていない。

◎政権交代

議会は内閣不信任決議によってジョンソン政権を打倒し、合意なき離脱阻止を試みるための2つの機会を生み出すことができる。

第1に、不信任決議が可決されれば、選挙が実施され、離脱延期もしくは離脱撤回を目指す新政権が生まれる可能性がある。

しかしジョンソン氏には10月31日以降まで選挙を延期する権限がある。側近は同氏がそうする構えだと述べている。

第2の方法は試されたことがなく、予想がさらに困難だ。

不信任決議が可決されると、14日以内に新政権を樹立することができる。不信任決議案に賛成票を投じた過半数議員が結束し、安定的な新政権を樹立できれば、離脱延期を試みることが可能になる。

しかし今のところ与野党は単一候補の擁立で結束することに後ろ向きだ。

その上、この手続きを可能とした選挙法の成立は2011年で、このような方法で実施を試されたことはない。14日の間に誰が何をする権限を持つのかなど、仕組みが正確に定義されていないとの批判もある。

ジョンソン氏は辞任の義務はないと言い張り、選挙まで政権に留まると決めて、10月31日以降に選挙を実施する可能性がある。