中国、米国をWTOに提訴 9月の追加関税で
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ついこのあいだ、中国から輸入する太陽光パネルに課した米国の相殺関税をWTOの上級委員会が不当と判断したところだけれど、米国は逆にWTOを非難するばかりで、残念ながら何かが変わるとは思えません。それどころか、米国は上級委員会の委員再任を拒否して、上級委員会そのものを麻痺させる方向に動いています。
WTOに加盟させて貿易の枠組みに取り込んだがゆえに台頭を許したと見て中国をその枠組みから追い出したいであろう米国と、米国を追い抜くためにWTOの枠組みと貿易を守って世界の工場であり続けたいであろう中国の、WTOを巡る不毛な駆け引きみたいに見えますね・・・ (・_・;)
米国はこれによってWTOへの攻撃をますます強めそうですし、中国は自由貿易を守りたい国々を巻き込んで米国を非難しそうです。資源を輸入に頼るがゆえに貿易なしでは成長できないが、一方で米国に盾突くことも出来ない我が国はどう動くのか。難しさがまた募りそう (/_;)WTOの紛争処理制度における上級委員は定員7名だが、現在は3名しかいない。4名が欠員状態。今年の12/15で更に2名が任期満了となる。後任選びは全会一致が原則だが、米国が全て反対しており、決まっていない。このままでは、12/15を以ってWTOは紛争解決機能を失う。そして、紛争解決制度がないWTOは、その存在価値が著しく毀損される。
それでも中国が、米国をWTOに提訴するのは意味がある。中国は既存の多国間貿易システムを維持しようとしているというアピールとなるからだ。米国こそが破壊者であると国際社会にアピールしているのだろう。WTOなど不要だと主張するトランプ大統領(※)は,中国がWTOに提訴することによって,アメリカ国内の「WTO不要論」の勢いが強まっていくことが期待できるので,中国の提訴を嫌がるどころか,「よっしゃよっしゃ」で歓迎しているのではないかとも考えられます。
※ 「弱肉強食」の世界に、トランプ氏のWTO不要論をEUは警戒(ブルームバーグ日本版)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-04-10/PPQYOM6JTSE901
アメリカは,WTOの上級委員会(ここでなされた判断を覆すことができないという意味で,WTOにおける最高裁的な存在)には問題が多いとして,問題が改善されるまで,
「任期満了等に伴って上級委員に欠員が生じたとしても,補充を認めない」
という強硬手段に出ている状態であり,現時点で,定員7名のはずの上級委員会には,米国と中国の委員を含めて3名しかいない状況です(※2)。
※2 WTOのHPより。
https://www.wto.org/english/tratop_e/dispu_e/ab_members_descrp_e.htm
そして,上級委員会の判断には委員3名の合議が必要であるところ,先に述べたとおり委員はかろうじて3名いますが,うち2名は本年12月に任期が満了する状況にあります。
欠員補充を認めないというアメリカの方針が変わらない限り,紛争解決機関としてのWTOはすでに崩壊寸前です。
もちろん中国は,そんなことなど百も承知の上でしょうから,「アメリカの横暴」を国際世論にアピールするために提訴するという側面が強いと感じます。
国際社会にとって最悪のシナリオは,WTOにまで「戦線が拡大」することで当面は収拾が付かないような状態になり,改革する以前にWTOがぶっ壊された状態になってしまうことではないでしょうか。
さすがに,ある程度のところで当事国であるアメリカ,中国が着地点を探っていくでしょうが・・。