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「年金が2割減る」は間違い
厚生労働省が年金の財政検証を発表し、「年金が2割減る」と話題になっています。しかし、年金が2割減るわけではないので、過度な心配は無用です。
2割減るのは所得代替率という数値です。これは、高齢者の年金が現役世代の所得の何%か、という割り算の結果です。要するに現役に対する「割り負け度合い」ですね。これが約30年間で約2割減る、というわけです。
厚生労働省は、6通りのケースを試算していますが、もっとも標準的とされるケースⅢについて、標準的なサラリーマンと専業主婦が二人合計で受け取る年金額を見て見ましょう。
重要なことは、ケースⅢだと年金の金額自体は増えるということです。しかも、これはインフレ調整後の数字なので、年金だけで生活している人の生活レベルは向上するのです。
現役世代の所得が大きく増え、年金が少し増え、結果として高齢者の「割り負け感」が増す、というだけの事です。
ちなみに、比較的慎重なケースⅤでも、年金の減り方は2割より遥かに小さいのです。年金が2割減る、というのが如何にミスリーディングであるか、ご理解いただけたと思います。
高齢者にとって、重要なのは、年金の金額(インフレ調整後)であって、現役との割り負け感ではありません。仮に現役の所得が10倍になり、年金が2倍になったとすれば、皆が満足し、不満に思う高齢者はほぼ皆無でしょう。
そうであれば、所得代替率には大きな意味はありません。厚生労働省は所得代替率を非常に大事だと考えているようで、発表資料にも大きく表示してありますが、これがミスリーディングなのです。あたかも高齢者が貧しくなるような誤解をする人や、読者を誤解させて政府批判の材料にしようとする一部の人などが出てくるからです。所得代替率は、脚注にでも小さく載せておけば良いのです。
そもそも、仮に年金が減るとしても、少子高齢化なのだから、当然のことです。政府を批判するのは筋違いです。誰が総理大臣になっても、魔法使いでない限り、「高齢者の年金を減らす」「現役世代の年金保険料を上げる」しか方法が無いのですから。
したがって、年金問題は与野党政争の具とせず、協力して数十年後の年金の姿を考えて欲しいものです。
「経済成長率が低いから高齢者の年金が減ってしまうのだ。もっと経済成長率を高めよ」という批判は経済政策の議論ですから、大いに歓迎しますが。