【米オフィス事情】透明化の反動で「隠し部屋」ブーム到来

2019/8/26

中世にさかのぼる「トレンド」

透明性は、近代的なオフィスデザインの大きなトレンドになっている。間仕切りのないオープンな空間、個室を減らし、壁やドアをガラス製にするといった具合だ。
#MeToo運動の高まりによって、密室で起こりうる恥ずべき行為に注意が喚起されているこの時代、すべてのモノや人が見える状態にあるということが、ある程度の安心をもたらすのかもしれない。
しかし、秘密の空間に対する欲求はいまだに根強い。
中世の城の秘密の通路から、禁酒法時代のもぐりの酒場まで、秘密のスペースはいつの時代にも存在した。今ではオフィスや商業施設にも登場している。意外な場所で部屋を発見するというスリルを味わうことができるし、VIP専用のスペースに出入りするという魅力があることは言うまでもない。
「隠された空間は、職場にある種の発見の楽しみをもたらします。従業員と訪問者にとってのサプライズなのです」
建築事務所「TPGアーキテクチャ」のクリエイティブ・ディレクター、サマンサ・マコーマックは言う。同社では、クライアントのオフィスの設計に「秘密の部屋」を組み込むことが多い。「しゃれているし、遊び心の要素がありますよね」
広告代理店ドイッチュの会議室奥にある隠し部屋。内部の写真は「事例4」参照(Hunter Kerhart/The New York Times)

緊張から逃れる特別な場所