[シドニー 15日 ロイター] - 豪中銀のデベル副総裁は15日、米中の通商摩擦が世界的に企業の投資決定を先送りさせており、経済活動を阻害しているほか、自己実現的な世界景気悪化のリスクになっていると警告した。

また、テクノロジーを巡る米中の対立は長期的により大きな打撃をもたらす可能性があるとも指摘。企業が世界市場を相手にするのではなく、東洋か西洋のどちらかを選択するよう迫られる可能性があるとした。

デベル副総裁はリスクに関する会議で「関税の面では、25%の関税見通しは、新規工場や新しい機械に投資するかどうか、どこに投資するかどうかを決定する上で一次的な検討項目だ」と指摘。「企業は、投資よりも不確実性がいかに晴れるかを見極めようとしている」との見方を示した。その上で「企業の(投資決定)先送りが長引けば長引くほど需要は低迷し、企業の見極め姿勢をさらに強めることになる。これが自己実現的な景気悪化のリスクとなっている」とした。

米中通商摩擦が、数十年にわたって続くルールに基づいた貿易システムも損なっていると指摘。それは米欧や日韓の通商問題に表れているとし、「貿易が貿易とあまり関係のない問題を含め、取引材料として利用されている」と述べた。

また、中国の景気刺激策が豪コモディティーに対する需要を下支えする中、米中貿易摩擦の豪州への影響は今のところ限定的との認識を示す一方、「中国経済と家計所得がさらに顕著に減速すれば明らかにリスクとなるだろう」と語った。

国内については、所得と賃金の異例なほど鈍い伸びを踏まえると家計消費見通しが主要リスクと指摘。「雇用の伸びは妥当な水準となる見込みだが、われわれは賃金の伸びの大幅な拡大は見込んでいない」と述べた。

金利低下と最近の税金還付が需要を下支えするとみているが、どの程度が消費や貯蓄に回るかは不明確との見方を示した。

消費の見通しについては「軟調な労働市場などを背景に一定の短期的な下振れリスクがある」としつつ、「見通しに対するリスクは一段とむらなく均衡している」と述べた。

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