[鹿児島市 1日 ロイター] - 日銀の雨宮正佳副総裁は1日、鹿児島市で記者会見を行い、追加的な金融緩和の手段が尽きていることはないと強調する一方、これまでの大規模な金融緩和によって政策の効果と副作用の比較は、他国より慎重に検討すべき状況になっていると語った。また、長期金利が大きく変動した場合、変動容認幅を広げることもありうる、との見解を示した。

雨宮副総裁は、前回の金融政策決定会合で物価2%目標に向けたモメンタムが「損なわれる恐れが高まる場合には、躊躇(ちゅうちょ)なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と声明文に明記したことに関連し、「前回の金融政策決定会合の決定は、世界経済の不確実性、下振れリスクに端を発して、警戒モードを一段階上げた」と表明した。

午前の講演では、将来のリスクの顕在化を未然に防ぐために政策対応を行うことも選択肢と発言。こうしたリスク対応は「予防的、保険的ということとも共通する」としたが、物価のモメンタムが損なわれる恐れが高まったと判断される具体的な経済・物価情勢に関しては「具体的な基準を持って考えることは適当ではない」と総合判断を強調した。

これまでの大規模な金融緩和の継続によって、金融システムや市場機能に対する副作用も意識されるなど追加緩和のハードルは高いとみられるが、雨宮副総裁は「すでに深い金融緩和をやってきているというだけで、次の手段がより限定的になるとか、小さくて済むという性格のものではない」と言明。

緩和手段として長短金利目標の引き下げや資産買い入れの拡大などを挙げ、「金融政策の追加的な手段が尽きているとか、非常に乏しくなっていることはない」と述べる一方、「政策手段がもたらす効果や副作用の比較考量については、他国より慎重に注意深く検討すべき状況になっていることは事実」と語った。

日銀は現行のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策において、長期金利をゼロ%を中心に上下0.2%程度の範囲内に誘導している。

長期金利が大きく変動した場合の対応を問われ、水準だけでなく変動率や背景なども考慮するとしながらも、「大きく動くようであれば、それ(変動許容幅)を広げることも当然、ありうる」と指摘。そのうえで、そうした対応は「(個別の)緩和手段とその組み合わせ、応用、そうしたパターンのうちの1つ」とし、金融政策の変更に当たるとの考えを示唆した。

(伊藤純夫 編集:石田仁志)