[ロンドン 25日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は上機嫌になるだろう。新たに起用したウイサル・トルコ中銀総裁がエルドアン氏の意をくんで、政策金利を一気に4.25%ポイントも引き下げたからだ。

さらにグラフからは、今回の利下げが序の口にすぎないことが分かる。短期金融市場は、年内にあと2%ポイント幅の利下げを想定しているが、それでもまだ1年前の政策金利水準よりは高い。

だから市場が突然緊迫しない限り、次の利下げは中銀が予定する9月12日の次回会合で決まると予想される。折しもその日は、欧州中央銀行(ECB)の次回理事会が開かれ、ユーロ圏の政策金利のマイナス幅を一段と拡大するとみられる。

ECBの追加緩和はトルコ中銀がまた大幅な利下げに動く上で援護射撃になるだろうか。少なくとも、積極利下げの妥当性を損なわないのは間違いない。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの新興国市場ソブリン債責任者エドウィン・グティエレス氏は、25日のトルコの利下げについて「非常にアグレッシブだった。世界的に(市場の)情勢が極めて落ち着いているおかげで、それが許されている」と分析した。

<脆弱な足場>

トルコ自体を巡ってはさまざまな地政学的懸念がある。ロシア製防空システム「S400」の購入で米国の反発を招き、隣国のシリアは不穏なままで、足元ではキプロス近海の石油・ガス採掘問題で欧州連合(EU)との対立まで発生した。それでもトルコ市場の地合いは目立って改善し、資産価格は戻り歩調をたどっている。

ただドイツ銀行のアナリストチームは25日、トルコ資産の足場は引き続き脆弱だと指摘した。投資家のリラ建てトルコ債の年初来売り越し額は約25億ドルと今年の新興国ではポーランドに次ぐ規模に達しており、ドイツ銀の試算では外国人のトルコ債保有比率はおよそ11%と過去最低に近い水準にとどまる。

<なお高い実質金利>

もう1つ考慮しなければならないのは、25日の大幅利下げ後でもトルコの実質金利は依然として過去最高の部類にあることだ。これは投資家のトルコ債に対する活発な需要を維持するプラス面がある一方、エルドアン氏はウイサル氏にもっと利下げしろと激しく迫る事態につながる公算が大きい。

オクスフォード・エコノミクスのアナリスト、マヤ・セヌッシ氏は「トルコ中銀が(25日に大幅利下げを)決定した直後に1%下落したリラはすぐに値を戻しており、中銀は市場の想定から極端に行き過ぎることはない可能性がうかがえる。それでも9月の次回会合前に追加利下げ圧力が高まり、国内外の投資家の不安を強めてしまうかもしれない」と述べた。