[東京 26日 ロイター] - 内閣府は26日公表した報告書「世界の潮流」で、米中貿易摩擦の影響を分析した。米国が今年5月に打ち出した対中追加関税第3弾は、米国内の輸入品の価格を押し上げ、米国の消費者の負担増につながっていると指摘している。サプライチェーンを通じて世界全体の製造業の景況感も下押ししており、企業の設備投資意欲などにマイナスの影響を与えるとして、早期の摩擦解消の必要性を強調した。

トランプ米大統領は、対中追加関税は主に中国の輸出企業が負担していると主張しているが、報告書は世界銀行や米コロンビア大学の研究を引用し、輸入関税の賦課は米国の国内価格にほぼ完全に転嫁されており、米消費者がそれを負担していると指摘した。

5月にトランプ大統領が追加関税第3弾を発表して以降、ミシガン大学の消費者信頼感調査で、信頼感が悪化している要因として関税に言及した回答の割合が上昇し、耐久消費財を早めに購入するという回答の割合が急上昇した点などを報告書は取り上げている。

追加関税の影響で米国で価格が上昇したものとしては、洗濯機や家具、寝具、自動車部品、二輪車、家事用品などを挙げている。

もっとも、米国の消費者物価指数(CPI)全体は大きく変動していない点も指摘し、理由として

追加関税による課税規模が米国の国内総生産(GDP)と比較して小さい(18年実績で0.16%)ことなどを挙げている。

このほか報告書では、米中貿易摩擦が製造業のサプライチェーンを通じて米国やアジア主要国・地域の対中輸出にも影響し、世界の貿易量を低下させ、経済の先行きの不確実性の高まりを通じて世界経済全体にマイナスの影響を与えていると警告している。

2018年の世界全体の貿易量は前年比3.0%増だったが、同年9月時点での世界貿易機関(WTO)見通し(3.9%増)を大幅に下回っており、19年も2.6%増(WTO試算)とさらに低下することを懸念している。

世界全体の製造業の景況感を示す購買担当者指数(PMI)も19年5月に改善・悪化の分岐点である50ポイントを下回っており、米中の通商問題がサプライチェーンを通じて世界全体の製造業の景況感を大幅に押し下げているとみている。また製造業の景況感低下は、中長期的にはサービス業にも影響を及ぼす可能性があると警告している。

(竹本能文)