[横浜市 25日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>は25日、2022年度までに全従業員の約10%に相当する計1万2500人を削減すると正式に発表した。世界の生産能力を18年度の720万台から22年度に660万台へと落とし、工場稼働率を18年度の69%から22年度には86%へ高めるなどの構造改革を進める。ゴーン前会長の拡大路線を見直す。

同日発表した4―6月期の連結営業利益は前年同期比99%減の16億円だった。主力の米国販売不振や次世代技術の開発費用が響いた。

<ゴーン前会長が拡大した生産ラインを削減>

人員削減は、スペインやインドネシアの生産ラインなどすでに実施・公表中の案件を含めて18年―19年度に8拠点で6400人、20年─22年度に6拠点で6100人の規模で実施する予定。

20年以降の人員削減は今後決めるため、対象となる工場名は公表しなかった。ただ、同日会見した西川広人社長は「不採算の海外拠点の(生産)ライン」が中心と説明し、「ダットサン」や小型車のラインと示唆。「1ラインを止めることもあるし、場合によっては工場丸ごともありうる」とした。ダットサンはインドネシアやロシアなどで生産されている新興国向けブランド。

削減対象は「(カルロス・ゴーン前会長が推進してきた数量拡大優先の中期経営計画)『日産パワー88』の期間中(11―16年度)に小型車を作ろうと投資をした部分がかなり大きい」とした。商品ラインアップも22年度までに10%以上減らす。

<構造改革費用は約400億円上乗せか>

同社は5月、生産能力を10%削減して従業員4800人以上を削減する方針をすでに示し、早期退職などの初期費用として470億円かかるものの、年300億円規模のコスト削減効果があると説明していた。この削減規模を倍以上に拡大させ、効率化を急ぐ。

軽部博・最高財務責任者(CFO)は、人員削減などに伴う費用について、決定分は「400億円強を引き当て済み」と述べた。今後決まる削減分は「同程度の費用」を見積もっているとし、その都度、引き当てる予定で、1000億円近くになる見込みだ。

同社は19年度の営業利益3900億円を、22年度には8700億円に引き上げる計画を表明している。改善に寄与する固定費3000億円削減は「9割がた、めどがついてきている」と西川社長は指摘。さらに「着実な成長」を通じて1800億円分改善させるとし、計画達成に意欲を見せた。

<4―6月期営業利益は99%減>

19年4―6月期の連結決算では、営業利益が前年同期比98.5%減の16億円だった。リフィニティブが集計したアナリスト8人の予測平均値395億円を大幅に下回った。営業利益率は0.1%と前年同期の4.0%から大きく低下した。

為替や原材料高などによる影響で423億円、中国を除く卸売り台数の大幅減少などにより605億円の減益要因となった。販売は米国、欧州、日本が低迷。西川社長は、販売台数は当初計画から「少し下振れしている」と述べた。

4―6月期の売上高は12.7%減の2兆3724億円、純利益は94.5%減の64億円だった。20年3月期通期業績予想は従来通りで、営業利益は前期比27.7%減の2300億円の予想とした。

(白木真紀 編集:平田紀之)