【石川善樹】平日のパフォーマンスは「土曜の朝で決まる」

2019/7/23
 ウェルビーイングという言葉を耳にするようになって久しいが、どれほどの人がそれを「実感」できているだろうか? そもそも、ウェルビーイングの定義とは何か?

 変化し続けるソーシャルトレンドにおいて重要な役割を果たすウェルビーイングについて、最新理論の紹介とともに、予防医学者の石川善樹氏に話を聞いた。

ウェルビーイングとは、「普通」を維持すること

──まずはウェルビーイングとはどういう状態を指すのか、教えてください。
石川 ウェルビーイングを日本古来の概念でいえば、「元気な状態」になりますかね。元気とは、何も“芸人・明石家さんま”みたいな状態ではなく(笑)、「もともと(元々)」ある「気」という意味で、要するに「普通の状態」ってことです。
 好調でも不調でもない、「ゼロポイント」とも言えるかもしれないですね。大概の人は不調が続くと、いかに「好調にもっていこうか」と考えがちですが、それよりも「普通」の状態に戻し、維持することをまず大事にしてみてはいかがでしょうか。
──「好調」であることが「よい状態」ではないのですか?
 不調が続くのはもちろんよくないですが、好調が続くと、それはそれで好調疲れを起こします。不調(マイナス)と好調(プラス)の間にある「普通(ゼロ)」という状態に自分自身を戻すことができる人が、結果として高いパフォーマンスを維持できる人だと考えています。
 例えば有名人でいうと、元プロ野球選手のイチローが、この「普通」の状態に戻すのがうまいんですよね。大抵のスポーツ選手は、不調に陥ると好調なときのプレーを見返して、なんとかそこにいこうとするんです。でもイチローだけは、スランプに陥ると「普通」に戻すことを意識するみたいです。その結果は言わずもがなですよね。
──自分の状態を「普通」に戻すためにすべきことはなんでしょう?
 まずは自分の「普通」の状態を把握しておくことです。とはいえ、ほとんどの人は何が普通なのか分からないと思うので、「絶好調」なり「絶不調」を経験してみることでそれらの状態を理解し、そこから徐々に「普通」に近づいていくのがいいと思います。
 不調でも好調でも過度なストレスがかかってビタミンやミネラルが失われてしまっています。日常的なストレスはいつかかってくるか分からないので、適切な栄養摂取を習慣にしておくことも大事でしょうね。
 特に夏場なんて、不調と好調、どちらの状態にも陥りやすい。寝苦しくて睡眠不足になってしまうこともありますし、夏休みが取れてやたらとハイになってしまうことも考えられます。夏は、ダブルでストレスを感じやすい時期だと言えるかもしれません。
 そして何より、日々の生活のなかで意識すべきは「一日の始まりと終わりを素晴らしいものにする」こと。極端な話、その間はどうでもいい。始まりと終わり、これを意識することがウェルビーイングにとって大事なことだと考えています。
──始まりで意識することとは?
 まずは、ちゃんと朝起きることです。ポイントとしては、平日も休日も起床時間を一定にすること。
 大抵の人は、休日に寝だめをしますよね。そこで起床時間が3~4時間ずれてしまうと、「社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)」という状態になってしまいます。その時差ボケ状態で平日を迎えるから、疲れが襲ってくるんです。
 月曜の朝からダルい、眠いという人は、休日の寝だめが原因である可能性が高い。だから、月曜からのパフォーマンスは、土曜の朝に決まるといっても過言ではないでしょう。
 土曜の朝こそ、平日と同じ時間に起きて、体内時計を狂わせないようにすることが重要です。
 そして、少しでもいいから朝ごはんを食べる。でも前日金曜の飲み会の影響や、平日の疲れがたまりがちな土曜の朝は、食欲がありませんよね。まさに私がそうです(笑)。
 そんなときは、まとまった栄養をバランスよく取り入れることができるゼリーを試してみるのはどうでしょう。手軽にすばやく必要な栄養素が摂取でき、私自身もいいなと実感しています。
 そして朝食を取ったら、太陽の光を浴びることも重要です。というのも、光を浴びて入るスイッチと、食べ物をおなかに入れて入る体のスイッチは異なるからです。
 重要なのは、このふたつのスイッチが同期するように同時に入れること。
 どちらかひとつが欠けてもダメで、例えば「日の光は浴びたけれど、朝食は取っていない」となると、バランスが崩れてしまい、不調に陥ってしまいます。プラスアルファで体を動かすのもいいですね。
──では、一日の終わりにすべきことは?
 夜遅くまで照明をつけて作業をしているのは、睡眠の妨げにもつながるのでよくないでしょうね。特に日本の住宅は明るすぎます。バスルームでさえ明るすぎるので、疲れを取るために湯船に浸かったつもりが、逆に疲労を蓄積させてしまうことになる。
 ただ、それ以上に一日の終わり方で気をつけてもらいたいのが「仕事の終え方」です。
 「終わりよければすべてよし」という言葉があるくらい、終え方というのは重要なんですよ。
 でも、正しい仕事の終え方なんて習ったことがないですよね? 大抵の人は、なんとなくブワーッと駆け足で仕事を片付けてそのまま帰ってしまいます。

To Doリストのチェックは、最悪な行為

──残った作業はTo DOリストにしてから帰宅する人が多いかもしれません。
( 写真:iStock / ryasick )
 そう、それが最悪なんです。
 現代社会で「やるべきことを完璧に終える」「残作業がなにもない」という状態は、ありえない。だからTo Doリストを作って振り返り、やり残したことを確認してから帰宅する人が多いんですが、人間の脳はそもそも「やり残したことは絶対に忘れない」仕様になっているんです。
 つまり、To Doリストの確認というのは、やり残したことをわざわざ脳に刻みつけているということなんですね。すると、それが夢にまで出てきてストレスにつながってしまう。
 それでも心配でリスト化しておきたいのであれば、残った作業を翌日どのように処理していくのかという計画まで立てておいたほうがいいでしょうね。計画を立てると、脳がそれを完了したものだと捉えてくれるんです。そうすると、安心して眠れます。ただし、これも決していい終わり方とは言えません。
──では、一番いい終わり方というのは?
 その日一番印象に残っていることを振り返ることです。れを「To Feel」と名付けています。
 例えば「計るだけ(レコーディング)ダイエット」ってありますよね。毎日体重を測って記録するだけで、少しずつ痩せていくというダイエット法です。それでどうして痩せていくのかというと、日々、体重を振り返っていく流れのなかで、意識的あるいは無意識的に生活習慣を見直しているからなんですよ。
 それと同じようなメカニズムで、一日の終わりに、その日印象に残ったことを振り返るようにすると、自然と行動の改善につながっていくという考えです。
 これはミーティングをしたときにも役立ちます。会議終盤に「To Do」の確認だけをすると、「ミーティング=仕事が増える場」として脳は記憶します。けれど、そのミーティングで印象に残ったことを振り返る「To Feel」を行うと、ミーティングを「エモーショナル体験」として素晴らしいものにするよう、意識的・無意識的な調整が入るのではないかなと。
──To Feelを行った結果、印象に残った失敗を思い出して落ち込むことになってもいいのでしょうか?
 あまりに落ち込むことが続きすぎるのであれば、それはそれで、何かを大きく変えるサインということでしょうね。
 体重が増えたときに「どうして増えたんだろう?」「あれを食べたからかもしれない」と気づきますよね。それと同じで、To Feelによって失敗を思い出したとすれば、次回から意識的・無意識的に対策をとるようになると思います。どんどん軌道修正していって、やがてよい状態になっていくというイメージです。

あらゆる感情を味わう“エモ・ダイバーシティー”という概念

 少し話を変えると、最近ウェルビーイングには、「エモ・ダイバーシティー(感情の多様性)」という概念が大切だと考えられるようになってきました。
 上の図でいうと、右上の「ポジティブで強い感情」が「うれしい!楽しい!自分最高!!」という状態を指すんですが、これまではそれがウェルビーイングだとされてきたんです。
 でも、ポジティブ感情だけでなく、ネガティブ感情も含めていろんな感情を感じることがウェルビーイングであると考えられるようになってきたんです。
 それがエモ・ダイバーシティーと呼ばれています。
──なるほど。でも、いろんな感情を感じると、なんだかストレスが多そうですね。
 そうですね。いろんな感情が生じるということは、「変化が多い」ということですし、そもそも人間にとって変化はストレスです。
 でも、それ以上にストレスなのが、変化がないこと(笑)。
 だからこそ、似たような感情だけでなく、いろんな感情が生じるような「変化ある一日」がいいのかなって思います。
──そのためにも、一日の始まりと終わりを素晴らしいものにしよう、と。
 そうです。もう少し視野を広げて、一週間を素晴らしいものにするためには、先ほど述べたように「土曜の朝」が重要になります。
 平日と同じくらいの時間に起き、バランスよくたっぷりの栄養摂取ができるゼリーを朝食として取るのは、どうしてもグダグダしがちな「土曜の朝」の特効薬になるのでは。その後は昼寝をしてもいいんです。
 とにかく朝、なるべく一定の時間に起きて、太陽の光を浴び、朝食を取る。それがウェルビーイングへの第一歩です。
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 明治『即攻元気ゼリー 凝縮栄養』は、高配合の11種類のビタミンと4種類のミネラルが凝縮されており、バランスよくしっかりと栄養補給ができる。
 ストレスや身体的負荷がかかるとビタミンやミネラルの消費が高まる。真夏の平日も自分らしく働いてパフォーマンスを発揮するためには、十分な栄養補給が鍵となりそうだ。
(執筆:五十嵐大 編集:川口あい 撮影:高橋絵里奈 デザイン:國弘朋佳)