[ワシントン 16日 ロイター] - 日本と米国が、農産品と自動車で互いに譲歩する内容の通商合意に向けて協議を進めており、両国の首脳が9月にニューヨークで会う際に合意を締結する可能性があることが、貿易交渉に詳しい3人の業界筋の話で16日、明らかになった。

自動車業界のある関係者によると、日本が米国に対して農産品の市場を開放し、その見返りに米国が日本製の自動車部品の一部について関税を削減するという内容の合意となる可能性がある。ただ、交渉は流動的という。

そのような合意がまとまれば、安倍晋三首相は自動車で成果を出したことになり、2020年米大統領選で再選を目指すトランプ大統領にとっても農家の支持拡大につながるとみられる。

別の関係筋は、トランプ政権は米国産牛肉と豚肉製品のアクセス改善を求めていると明らかにした。

日本市場へのアクセスが改善されれば、米国が環太平洋連携協定(TPP)加盟国と競争する環境が整う。トランプ大統領は大統領就任後すぐにTPP離脱を決めた。

前月に大阪で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせてトランプ大統領と安倍首相は通商問題について話し合ったが、会談の内容は公表されなかった。米政治専門サイト、ポリティコは16日、9月に何らかの合意が結ばれる可能性があると報じた。

米国が自動車部品の関税削減で合意した場合でも、米議会の承認は必要とならないとみられる。大統領は関税率が5%未満の製品の関税を撤廃あるいは削減する権限があり、自動車部品の大半は関税率が約3─6%にとどまる。

日米が互いに譲歩して合意をまとめる可能性について、日本政府の当局者はコメントを差し控えたが、事務レベルの交渉が行われていると述べた。

また、今月21日の参院選までは大きな進展はないだろうとの見通しを示した。日米双方には、最終決着に向けて合意点を見いだす必要があるという共通の認識があると指摘した。

米通商代表部(USTR)は合意の可能性について現時点でコメントはしなかった。米商務省の高官もコメントを差し控えた。

日本政府の立場に詳しいある関係筋は、小規模な合意という考え方は興味深く、合理的だと指摘。ただ別の関係筋は、協議では自動車と農業だけでなく、すべての項目をカバーする必要があると述べた。